コンビニの24時間営業問題の本質は『利害の対立』だ

画像: Toshihiro Gamo

2020.07.15

経営・マネジメント

コンビニの24時間営業問題の本質は『利害の対立』だ

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

コンビニの「24時間営業」問題に関し、コンビニ本部は「それが本当にFC店オーナーのためになるのか」という問いに答える責務がある。その関心の矛先がどこにあるかを端的に表すのが「ロイヤリティの算出ベース」だ。

いわく、「24時間開いているという信頼があるからこそお客様は来店する」「未明の時間に納品検品を済ませ弁当などの品出しを済ませておかないと早朝の来店客に間に合わない」「早朝に開いていることを見せておかないと午前中から昼間に掛けての売上が伸びない」などという主張だ。多少なりともこの業態の特殊な事情を理解していないと、「?」といったところだろう。

それにもう一つ、コンビニ本部としては幾つもの店が時短営業になってしまうと、そのエリアへの深夜配送の効率が落ちてしまうという事情もある。あまりあからさまに主張すると「本部の理屈だ」と反発されるかも知れないので言わないようだが、それがビジネスの全体最適と密接な関連を持つことは認めてしかるべきだろう。

これらのコンビニ本部の言い分は長い間に、そして日本各地での営業を通して裏付けされており、ビジネス運営者の視点からはそれなりに経済合理性を持つものだ。

しかしもう一つ、一番の本質部分で念頭に置いておかなければいけないのは、FC店オーナーとコンビニ本部が拠って立つ利益の方程式が違うことだ。

FC店オーナーにとっての利益の方程式は誰でも理解できる。本部への上納金であるロイヤリティ、バイト代などの人件費、光熱費といった比例費に加え、さらに地代や(店を始めるために借金をしていれば)金利などの固定費を支払う必要がある。それらを売上から仕入れ原価を引いた「粗利」から差し引いた残りがオーナーの「利益」であり、オーナー一家はそれで生計を立てている。

一方、コンビニ本部の主な「売上収入」はFC店オーナーから支払われるロイヤリティである。その収入から人件費や本部の諸々の運営費を差し引いた残りがコンビニ本部の「利益」となる。

だからロイヤリティが多ければ多いほどコンビニ本部は利益が上がり、FC店オーナーとしては利益が削られる。典型的な「利害の対立」の構図だが、ロイヤリティの根拠としてのコンビニ本部のマーケティング力(この場合、商品・サービス開発、ブランド、宣伝による誘客効果など)が優れていて、店の売上と利益が共に継続的に上がっていればFC店オーナーとしては文句ない。

しかし深夜営業のようなイシューが生じると、この『ロイヤリティ』の算出ベースが否応なしに引っ掛かってくる。どのコンビニ本部もFC店との共存共栄を謳っている割に、「粗利」がその算出ベースなのだ。決してFC店オーナーにとっての最終的な「利益」ではない。ここは大事なので注意して欲しい。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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