東芝の会社分割は本当に企業再生につながるのか?

画像: Joe Haupt

2021.12.16

経営・マネジメント

東芝の会社分割は本当に企業再生につながるのか?

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

先ごろ注目された東芝の会社分割は、欧米の例とは違って、企業側の狙いは随分と視座の低いものだったようだ。しかしながら結果オーライになる可能性も少なくない。

東芝は11月12日、社会インフラや半導体などの事業を3つの会社に再編し、会社を分割する方針を発表した。1)発電や送変電、公共インフラ、ビルの省エネソリューション、ITソリューションなどを事業とする「インフラサービスカンパニー」と、2)ハードディスク駆動装置(HDD)や半導体製造装置を事業とする「デバイスカンパニー」に事業を振り分け、さらに3)半導体メモリー大手のキオクシアHDの株式などを管理する存続会社(ここが「東芝」の名を受け継ぐ)を別にする。それぞれ2024年3月期をめどに上場させる方針だ。

米ゼネラル・エレクトリック(GE)もほぼ同じタイミングで会社3分割を発表した。23年初めに医療機器部門を分割。24年初めには火力発電と再生可能エネルギー、デジタル部門を合わせて電力事業会社として分社化。本体には航空機エンジン事業を残すという。

米日用品・製薬大手のジョンソン・エンド・ジョンソンも東芝と同じ11月12日、日用品や市販薬を含む「消費者向け部門」と、処方薬や医療機器などの「医療向け部門」の2事業に分割すると発表した。

つまり先月には国内外で大型の会社分割が集中的に発表された訳だが、思い切った買収・経営統合を辞さない海外では、そのコインの裏返しとして大企業グループの中核企業が分割する例はそれなりに生じていた。

例えば有名どころでは米ヒューレット・パッカード(消費者・小企業向け事業と大企業向け事業で2分割)、米ダウ・デュポン(素材化学、特殊産業材、農業に3分割)、独バイエル(素材化学を切り捨てライフサイエンス会社へ脱皮する過程で何度も分離・統合を繰り返した)など幾つも挙げられる。つまり欧米では、大胆な分割・統合は戦略的な企業変身の有効な手段として認知されているのだ。

ではなぜ東芝はこのタイミングで会社分割を決断したのだろうか。そこにどんな戦略的な狙いがあったのだろうか。

残念ながら、この分割を推進した会社側の最も有力な動機は「モノ言う株主」からの圧力に負けての後ろ向きな決断であり、要求した株主側の直接的な狙いはコングロマリット・ディスカウント(※)の解消だろうと推察できる。

※コングロマリット・ディスカウントとは、多くの事業を抱える複合企業(コングロマリット)の企業価値が、各事業の企業価値の合計よりも小さい状態のこと。投資家側にとって事業の全体像や相乗効果が見えにくく、複合企業の価値を精緻に評価するのが難しいことがその主要因とされる。

実際、会社分割発表時の東芝資料には企業戦略的な説明はほとんどなく、単にどう分割するのか、どう株式を配分するのかという財務技術的な側面の説明に終始していたため、「あまりに露骨なコングロマリット・ディスカウント対策だ」として話題(失笑の対象?)になったくらいだ。

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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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