「無断キャンセル」で飲食店を殺すな

画像: Todd Wight

2020.06.03

営業・マーケティング

「無断キャンセル」で飲食店を殺すな

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「緊急事態宣言終了は早すぎる」という声があるのは承知している。しかし体力に乏しい零細飲食店にはもうぎりぎりのタイミングだったはずだ。何とか生き延びた店にも幾つか大きなハードルが立ちはだかる。その最たるもの、そして最も腹立たしいものが、大した罪の意識もないまま繰り返される「無断キャンセル(No show)」だ。

さらに予約人数が多い場合、店側ではスタッフを臨時に増強する必要に迫られるが、その人件費は無断キャンセルの場合にはまるまる損失につながる。この場合、4重苦だ。

ではなぜ消費者は無断キャンセルなどという「非道なこと」をしてしまうのだろう。

昨年、ある民間機関が消費者に対し無断キャンセルの経験と理由をアンケートしたところ、1割以上の人が「無断キャンセルをしたことがある」と回答している。

無断キャンセル経験は20~30代が圧倒的に多数を占めており、グルメサイト経由での予約の場合がやはり多数を占めるという。要は、手軽に予約できる分だけ、気軽に無断キャンセルしてしまっており、「非道なこと」をしているという意識はほとんどないのだ。

正直、「約束を守らない日本人がそんなに多いのか?」と信じられない思いだ。我々の世代だと、そもそも複数の店をダブルブッキングすることは考えられないし、仮に「キャンセル待ちしていた本命の店の予約が取れたので次善の店をキャンセルする」といった状況なら、先に予約しておいた店に迷惑をかけたくないので、何はさておきキャンセル連絡をするだろう。

もしかすると、無断キャンセルするような輩は飲食店への予約を「約束」と捉えていないのかも知れないし、自分の身勝手な行為が店に及ぼす「迷惑」を意識すらしていないのかも知れない。

こうした人々はそもそも想像力が乏しくて、すべての事柄を改めて丁寧に説明されないと、物事がどう影響を及ぼすのかを自分の頭では考えることができないのではないだろうか。しかしそういう「他人の迷惑に鈍感」な連中がスマホで手軽に、グルメサイト経由で予約できてしまうことで被害が確実に拡がっていることは間違いない。

では飲食店としては無断キャンセルを防ぐのに有効な方策はあるのだろうか。業界では幾つかの方策を試行錯誤している。

本来は無断キャンセルした人から一定の金額を徴収するのが筋だ。宿泊業などは既に実践しているが、飲食業の多くはキャンセル料徴収にはまだ踏み切れていない。SNSで何と書き込みされるかが怖いというのだ(実際、「当日キャンセルしたらキャンセル料を請求された。態度悪い」と非難する理不尽な書き込みを目にしたことがある)。

ではどんな代替手段があるだろうか。最も現実的なものは無断キャンセルを防止する機能を組み込んだ予約サイトを利用することだ。

予約時にクレジットカード番号を入力させるところ、デポジットを預かるところ、自動リマインド機能で確認が取れない場合には自動的にキャンセルする設定など、やり方は幾つかある。そしてNo showだった時には一定のキャンセル料を徴収することを明確に宣言するだけでも、無断キャンセルする人はかなり減るだろう。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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