コンセプチュアル思考〈第23回〉 コンセプトの精錬法[5]~研ぎ澄まし

画像: Career Portrait Consulting

2017.03.16

組織・人材

コンセプチュアル思考〈第23回〉 コンセプトの精錬法[5]~研ぎ澄まし

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ

コンセプトを精錬する方法を6つに分けて紹介しています。きょうはその5番目―――「研ぎ澄まし」です。


◆5-a)エッジを立てる
広告やメーカーの世界では、コンセプトという語を「一連の広告キャンペーンのコンセプトは」とか「ある自動車メーカーがコンセプトカーを出展し」などというように、「先鋭化させた意図・着想」の意味で限定的に使っています。

世の中に次々と起こる流行やトレンドは、だれかが物事の先端をとらえ、そのとらえた内容を鋭く表現し、差し出すことで生まれてきます。広告の世界には、そうした「エッジ:edge=端、刃」の立った表現の見本をたくさん見つけることができます。

例えば、「モーレツからビューティフルへ」(1970年、富士ゼロックスの広告)のような時代を画するメッセージ。さらには、大衆から「少衆」「分衆」(1985年)へというような新しい概念の提起です。

また、「なにも足さない。なにも引かない。」(サントリー『山崎』、西村佳也)、「一瞬も 一生も 美しく」(資生堂、国井美果)、「ほしいものが、ほしいわ」(西武百貨店、糸井重里)、「おしりだって、洗ってほしい。」(TOTO『ウォシュレット』、仲畑貴志)「亭主元気で留守がいい。」(大日本除虫菊、石井達矢)などのように先鋭的に登場しながら、時を経てもそのエッジが摩耗していないコピー表現があります。

モヤモヤした事象をモヤモヤのまま放置するのではなく、そこから本質的なことを感じ取り、何か突起物のようなものをこしらえて、人びとがつかまえやすくする表現作業―――それが「エッジを立てる」ことと言っていいかもしれません。

広告の世界以外で言えば、例えば『ハーバード・ビジネス・レビュー』。同雑誌には、先端的・予見的な記事が多く掲載され、学術的にエッジの立った寄稿が多く見受けられます。いかにエッジを立てる感覚で特集記事の切り口をつけているか、記事タイトルに落としているか、といった目線でながめると、コンセプチュアル思考を学び取る教材としても有用です。

◆5-b)造語する
物事のありようを研ぎ澄ませて見つめていき、それを言葉に結晶化させようとするとき、既存の言葉では間に合わない場合があります。そんなとき、私たちは造語します。

メディアに流れてくる新語や流行語、バズワードなどの多くは、新しい空気のもと、新しい感性によって造語されたものです。その造語がどれだけ長く生き延びるかという耐久性は、ひとえにその言葉のコンセプチュアルなくみ取りの深さによっています。現象を表層的にとらえたものは短命になるでしょうし、深層にある本質的なところをとらえたものであれば長命になるでしょう。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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