コンセプチュアル思考〈第24回〉 コンセプトの精錬法[6]~喩え

画像: Career Portrait Consulting

2017.03.29

組織・人材

コンセプチュアル思考〈第24回〉 コンセプトの精錬法[6]~喩え

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ


物事のとらえ方を精錬する方法を6つに分けて紹介しています。きょうはその6番目―――「喩え」です。


◆少女につかみ取った美しさを「蛭の脣」に喩える
本講義で何度も触れてきたように、「コンセプチュアル思考」でいう「コンセプト」とは、物事の本質をつかむこと、そしてそのつかんだ内容です。

私たちは物事を見つめ、そこから何か本質的なことをつかみかけたとき、それをさらに確かなものにするために、何かわかりやすいものになぞらえてつかもうとします。それが、今回のテーマ「喩え」です。

例えば、川端康成の『雪国』に出てくる一節───

「細く高い鼻が少し寂しいけれども、その下に小さくつぼんだ脣(くちびる)はまことに美しい蛭(ひる)の輪のやうに伸び縮みがなめらかで、黙つてゐる時も動いてゐるかのやうな感じだから、もし皺(しわ)があつたり色が悪かつたりすると、不潔に見えるはずだが、さうではなく濡れ光つてゐた」。


もしあなたが目の前にいる少女に何か美しさを感じ、見入ってしまったとしましょう。彼女の美しさの本質がどんなものであるか、それを表現したいときに、直接的な説明文ではどうも表わしきれない、あるいは直接的に言うことが野暮に思える場合があります。そんなときに私たちは「喩え」という技巧を用い、つかもうとする本質を精錬していきます。川端もまたこのとき、少女からつかみとったコンセプトを「蛭(ひる)のような脣(くちびる)」に喩えて研ぎ澄ませたのでした。

◆6-a)修辞技法(レトリック)を用いる
こうした喩えは、修辞技法(レトリック)と呼ばれるものの一部です。直喩・隠喩・換喩などがあります。

【直喩の例】
「法王ボニファチウス八世は、狐のようにその職につき、
獅子のように振舞い、犬のように死んだという」

───モンテーニュ『エセー』
【隠喩の例】
「とらわれぬ目で比べてみるがいい、彼女の顔を。
思い知らせてやろう、君の白鳥がただの烏(からす)だったと」。

───シェークスピア『ロミオとジュリエット』
【換喩の例】
「春雨やものがたりゆく蓑と傘」
───蕪村


ここに出てくる「狐・獅子・犬」「白鳥・烏」「蓑・傘」という喩え。この喩えを通して、私たちは内にある本質をよりよく表現でき、また、本質をよりよく味わっていくことができます。この「狐・獅子・犬」「白鳥・烏」「蓑・傘」といった比喩を思いつけるかどうかは、確かに文学的才能を必要とはするものの、むしろ根本的にはコンセプチュアル能力が強いか弱いかによります。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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