社会インフラを考える (4) インフラ維持に住民とICTを活用せよ

画像: TSUKUBA Vision

2014.04.02

経営・マネジメント

社会インフラを考える (4) インフラ維持に住民とICTを活用せよ

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

不可欠なのは道路インフラの維持管理コストの抑制であり、そのために必要なのは住民ボランティアと、優先度づけを判断するための点検の自動化・効率化だ。

最近では、保守車両だけでなく一般車両のGPSデータと関連させた走行データ(プローブ・データ)を大量に集め、そのビッグ・データを解析することで、特定地点の路面に問題があることを推測する実証実験も、日本その他で行われている。もっと簡易的にスマホを持つ市民の協力を得て、一定期間同様の実証実験で効果を上げた例も世界にはある。

車メーカーやICTベンダによる、こうした技術開発との組み合わせも期待されるところだ。

問題スポット領域がある程度絞り込まれるだけでも、その辺りを先の精密な機器で念入りに測定・診断すれば、効率は各段に上がる。先に挙げた専用測定・診断機器を(所有するのではなく)一定期間レンタルすることも選択肢に入るだろう。

課題としては、こうした民間各社が独自に開発している測定・診断技術やシステムは単独では費用対効果が分かりにくく、個別導入ではインフラ維持管理業務の全体効率向上への貢献はあまり大きくないと懸念されることだ。

各社の技術・システムをうまく組み合わせ、それらを連携的に運用する基盤的仕組みが望まれる。できれば色々な市町村および都道府県がまたがって使えるような共通基盤ならば、割安になるのではないかと期待される。

そのためにはどんな技術をどう連携させると効果的なのかを、ベンダが集まって検討することが求められる。

もし自主的に集まるのが進まないのなら、役所や中立的な機関がベンダ各社に声を掛け、全国で条件の異なる地域を選んで集中的に実証実験することが必要だ。その際には先に述べた住民ボランティアの参加も計画に織り込んで欲しいものだ。

この道路インフラ維持管理分野で有効な方法を開発できれば、国内のインフラ維持コストの抑制になるだけではなく、先進国および一部新興国へのインフラ輸出のキーパーツとなる可能性も十分ある。日本を元気にする、重要な処方箋の一つだと小生は考えている。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

世界的戦略ファームのノウハウ×事業会社での事業開発実務×身銭での投資・起業経験=実践的な創業の知見を誇ります。 ✅足掛け35年超にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクト=PJを主導 ✅最近ではSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)PJの一つを支援 ✅以前には日越政府協定に基づくベトナム・ホーチミン市での高速都市鉄道の計画策定PJを指揮  パスファインダーズ社は少数精鋭の経営コンサルティング会社です。事業開発・事業戦略策定にフォーカスとした戦略コンサルティングを、大企業・中堅企業向けにハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/                  弊社は中小企業向け経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。特に後継経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/       

フォロー フォローして日沖 博道の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。