社会インフラを考える (3) 道路の新設はせず、維持管理を優先せよ

画像: Jill Lee

2014.03.19

経営・マネジメント

社会インフラを考える (3) 道路の新設はせず、維持管理を優先せよ

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

日本の道路インフラはこれから危機的状況を迎えようとしている。今ある分の維持だけでも膨大なコストに上りそうで、今の体制・予算ではとても面倒を見切れない。それでも新設したい自治体は、国に頼らない方法を模索すべきだ。

東日本大震災から3年、いっこうに復興が進まないという声がそこかしこで聞こえる。「国土強靱化」の掛け声と景気回復に背中を押された建設ラッシュによって、人手と資材、建機や輸送車などが奪い合いになって不足し、高騰している。そのため当初予算に収まりきらずに入札が不調になり、工事が進まないのだ。ましてやこの後、増税後を見越した5.5兆円の経済対策、東京オリンピックへ向けた首都圏の整備といった要素が重なり、今以上に事態が悪化する可能性が高い状況だ。これは以前、小生が指摘した通りだ。

http://www.insightnow.jp/article/7900

その裏で恐ろしい事態が進行している。橋が老朽化したり道路が陥没したりして通行止めになるなど、通行規制が掛るケースが全国で急増している。実は我が国では今、高度成長期に集中的に建設された道路インフラが寿命を迎えつつあるのだ。しかもこの事態は随分前から警告されていながら、予算不足を理由にほぼ放置されてきた問題なのだ。

国土交通省は昨年末、全国のインフラ(道路だけではなく役所建築物など含む)の維持管理や更新にかかる費用が、10年後の2023年度には今年度より最大4割増えて年間4.3~5.1兆円に達するとの試算を発表した。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS25041_V21C13A2EE8000/

その試算には先に触れた、インフラ建設関連のコストが急増している状況がどれほど反映されているかは分からないが、官公庁の建設コスト見積りには後になればなるほど膨れ上がる傾向があることは留意すべきだ。いずれにせよ、道路インフラだけでもその維持管理にはこの先とてつもないコストが掛ることだけは確かなようだ。

実は国交省は2014年度から道路の橋やトンネルの定期点検を地方自治体に義務づけており、建設から50年以上たったものや災害時の輸送道路を優先して点検するよう求めるそうだ。昨今のインフラ危機の進行に対し、管理責任者としての自覚と維持実行を求めた格好だ。しかし自治体の多くには専門的知識を持った人員もおらず予算も不足している上に、そもそも危機意識もないのが実態だ。管理資産でありながらトンネルの点検を全くしていないことを指摘した取材メディアに対し、「トンネルというものは壊れないものだと思っていたから」と言い訳をする自治体が続出したことや、対象の自治体すべてが点検マニュアルすら所有していなかった事実が発覚している。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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