社会インフラを考える (1) 五輪向け整備と震災復興の両立のために

画像: Andy Mitchell

2013.09.16

経営・マネジメント

社会インフラを考える (1) 五輪向け整備と震災復興の両立のために

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

東京五輪招致の成功の日、日本列島は喜びに沸き、久々に一体感があった。政府関係者には「五輪をアベノミクスの『第4の矢』に位置付けよう」という声すら出ているそうだ。ちょっと待って欲しい。このままでは被災地の復興は後回しにされ、将来の国民は国の負債に押しつぶされる。

今、政府が真っ先にすべきことは、『第3の矢=成長戦略』の要である規制緩和を思い切って進めることだ。さもないと建設ラッシュにより、五輪のためのインフラ再整備事業はコストがはね上がり、東北の震災復興事業がますます進まなくなる。『第2の矢=公共投資』に投入される膨大な予算は資材費・人件費増に吸収されてしまい、後に残るのは増発された国債=借金の山、という羽目に陥りかねない。

何を懸念しているのか、説明させていただきたい。実は東北の震災復興事業の進捗がよくない。その理由は複合的だ。

当初はそもそも復興計画を策定する自治体における人手やノウハウの不足があったと聞いている。その後遅ればせながらも当該自治体の復興が着手され始めた段階では、土木・建設に関わる地元業者のキャパ(能力)を圧倒的に超えていたため、全国から人手や車両・設備・資材をかき集めようとしていた。

しかし他地域でも復興予算の流用などで一時的需要が湧き上がったため、そして電力・原燃料が高騰したため、必ずしも被災地に十分な量を集められないまま人件費や資材費が高騰したのである。その結果、当初計画していた金額では入札できないケースが続出した。当然、入札のやり直しや計画の練り直しも相次いだ。

https://www.evernote.com/shard/s47/sh/6bbb7c70-e688-45ef-abb5-21682f2fef8e/cc651539f0bb06cafd822f8bd6eec139

もたついているうちに、今度はアベノミクス効果で景気回復が見えてきた。しかも円安も進み、世界的には原油高だ。すると原燃料費と資材費がさらに高騰する中、全国各地で土木・建設需要が盛り上がることになり、ますます被災地に人もモノも集まらないという悪循環に陥りつつある。

このような状況下、五輪のために首都圏のインフラ整備が本格的に着手され、さらに来年の消費税導入に伴う景気落ち込みを補うためという名目で公共投資の大幅追加が推進されると、この悪循環がさらに加速されることは火を見るより明らかだ。そうなれば冒頭に述べた懸念が現実化してしまう。

ではどうすればいいのか。消費税導入対策をどうするかの政策的判断は置くとして、少なくとも人的リソースの面でのひっ迫を緩和する方法はある。自動化の推進と、外国人労働者の活用である。そして、いずれにも思い切った規制緩和が必須である。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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