電子出版がもたらす地殻変動―著者と読者の距離が縮まる-

2010.08.25

ライフ・ソーシャル

電子出版がもたらす地殻変動―著者と読者の距離が縮まる-

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

次々とベストセラーを飛ばし、一時は自らも出版業界に身をおいたアメリカのマーケティング・グル、セス・ゴーディンが、「もう、従来型の出版はしない」と宣言。その心は? そして、電子出版にかける夢は?

日本でも『パーミッション・マーケティング』や『「紫の牛」を売れ!』などの著書で知られるセス・ゴーディン。今日のアメリカで「マーケティング・グル」といえば、誰でも彼の名前を連想するというくらいの著名人だ。その彼が、8月23日付けのブログで、「もう、従来型の出版はしない」と宣言した。

セス・ゴーディンといえば、1999年に出版された『パーミッション・マーケティング』を皮切りに、12本のベストセラーを飛ばしてきた。それ以前には、彼自身、出版プロデューサーとして活躍していたこともあるから、いわば、「出版業界の中の人」であるわけだ。その彼の口から、「もう、従来型の出版はしない」という言葉を聞くのは、他の誰の発言とも比べ物にならないくらいの重みがある。

従来型の出版では、「著者の顧客は読者ではなく、出版社だ」とセスは説明する。どの本が出版されるかを決めるのは出版社であり、出版社のお目がねにかなわなければ、本が日の目を見ることはない。

従来型の出版は、「本という媒体と、複雑な流通構造を通じて、不特定多数の読者に著者の主張を届ける」ことには優れている。・・・これは、著者と読者が直接つながることが難しかった時代、読者の顔が見えなかった時代にはうまく働いた。でも、今はどうだろう。ウェブの普及のおかげで、著者が読者と直接つながることは、いとも簡単になった。

セス・ゴーディンのブログは、マーケティングという分野ではアメリカで最もよく読まれているブログである。「今の私には、『読者が誰か』ということがよくわかっている。読者と著者の間に何層もの隔たりをつくる従来型の出版の仕組みは、もはや、私(著者)にとっても、読者にとっても意味をなさない」とセスはブログに書く。

著者が読者とつながっていて、読者が「読みたいもの」を熟知している場合、なぜ、遠回りをして、出版社を中に入れる必要があるのか、というのが、セスの主張である。それは、著者のためにも、読者のためにもならない。

従来型の出版構造が抱える問題については、私も、『ザッポスの奇跡』の出版を巡ってさんざん苦渋を呑まされてきた。私としては、『ザッポスの奇跡』が語るテーマは、今の日本企業にとって非常に重要なテーマだと思っていたし、日本の読者の皆さんにも必ず役に立てていただける本だと思っていた。だが、日本における「ザッポス」という会社の知名度の低さがネックになり、「売れる本ではない」という理由でいろいろと回り道をさせられた挙句、最終的に共同出版という手段をとった。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業でNASAプロジェクトなどに関わり経験を積んだ後、82年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「未来企業は共に夢を見る~コア・バリュー経営~」(2013年3月発売)、「ザッポスの奇跡 改訂版 - アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略」、「顧客の時代がやってきた!売れる仕組みに革命が起きる」などがある。

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