浮くか、沈むか。米国小売店舗業界の正念場

2013.01.09

経営・マネジメント

浮くか、沈むか。米国小売店舗業界の正念場

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

新年の祝いのムードもつかの間、アメリカの小売業界を脅かす過酷な現実。2013年は店舗小売業者にとって、浮くか、沈むか、正念場の年となる・・・。

2013年。新しい年が明けました。

米国小売業界の年間売上の4分の1を占めるというホリデー商戦が幕を閉じ、その結果を見て思うのは、「2013年はアメリカの店舗小売業界にとって大変な年になる」ということです。

総じて言えば、ホリデー商戦中(11月、12月)のネット売上が前年比13.7%増を記録したのに対し、同時期の小売店舗の売上はわずか3.1%増でした。現在、年間を通じて、アメリカの小売市場売上全体にネット売上が占める割合は約7%。しかし、これが、生活者の価格感度がぐんと敏感になるホリデー商戦中に限っては、全体の16%を占めるまでに膨れ上がるのです。

それを意識してか、今回のホリデー商戦では、大手小売店舗がこぞって、ネット・ショップとの競争を意識した様々な対処策を講じました。 

ネット・ショップとの価格マッチング・サービスに始まり、同日配送サービス、店内でのウェブ端末やタブレットPCなどモバイル端末を活用したお取り寄せサービス、店舗での商品ピックアップ・サービス、無料Wi-Fiサービスや店内での娯楽やサービスを充実させたショッピング体験の提供など、あの手この手をつかっての抗戦でしたが、「ネット・ショップを打ち負かすための決定打」にはならなかったようです。

生活者の店離れのひとつの原因となっているのが、「ショールーミング」と呼ばれる現象です。アマゾンを筆頭にした「ネット通販」が幅を利かせるにつれ、店舗が「ショールーム化する」現象。顧客が店舗をショールームとして利用する、つまり、店舗に行っても商品を見たり触ったりするだけで購入はせず、代わりにネットに行って購入することを意味する言葉です。

もともとは、2010年にアマゾンが導入した「プライス・チェッカー」というスマホ対応の価格比較アプリが発端で、店舗の中にいながらにして顧客が商品価格をチェックし、ネット(アマゾン)で買うという購買行動がよく見られるようになりました。

しかし、現在アメリカのスマホ人口は全体の約50%。また、ユーザーのすべてが価格比較アプリを利用しているわけではありませんから、「ショールーミング」はスマホ・アプリのせい、というよりは、そうしたツールの開発と普及によって、生活者意識が大きく変わっていっているせいだといえるでしょう。

昔は店舗に行けば店舗で買い物をするものとみなが思っていました。購入チャネルとして、店舗に選択肢が限られていたわけですが、それが今は、店舗で商品の見た目をチェックしたり、手で触れてみたりするだけではなく、店舗にいながらにしてネット上の市場(いちば)で価格をチェックし、希望とあらば、即座に、その場で一番安いところから買うという選択ができるようになっています。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業でNASAプロジェクトなどに関わり経験を積んだ後、82年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「アメリカで『小さいのに偉大だ!』といわれる企業の、シンプルで強い戦略」(2016年4月、PHP研究所)、「未来企業は共に夢を見る~コア・バリュー経営~」(2013年3月発売)、「ザッポスの奇跡 改訂版 - アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略」、「顧客の時代がやってきた!売れる仕組みに革命が起きる」などがある。

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