就職が決まっても安心するのはまだ早い

2023.06.10

ライフ・ソーシャル

就職が決まっても安心するのはまだ早い

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/人が働ける期間より、企業の寿命、産業の限界のほうが短いのだ。それで、せっかく就職戦線を勝ち抜き、人気企業に就職できたとしても、道半ば、いまさら転進もできない50歳を過ぎてのところあたりで、会社のほうがダメになる。/

まして、事態は深刻だ。人口が急減する。いまはまだ折り返しで、高齢者が生き残っているから、マスプロダクトの大手企業も存続できていて、新入社員を募集するが、それはかなり無責任な話だ。今後、高齢者がこの世から退場していくと、社会の縮小は幾何級数的に悪化する。受注生産のような小規模のところは、やりくりもできるが、大量生産・大量販売を前提に大人数で広く薄く市場を吸い取っていた大手企業は、縮小となると、会社を維持する固定費が大きすぎて、組織構造そのものが維持できなくなる。薄利多売のマスコミ、新聞雑誌テレビ、広告代理店なんて、その典型。

もちろん、歴史を振り返れば、これまでの激変の時代にも、うまく世を渡っていった人はいないではない。概して言えば、最初から二股がけして、35歳くらいで早々に次のトレンドに乗り換え、その先駆者として多くの才能ある次世代の若手たちを集め従えて、そのトップとして70代まで君臨する。と言っても、こんなキャリアプランがうまく行ったのは、国家の成長、人口の増大があればこそで、ただでさえ世の中の先のことなんか、だれにもわからないのに、いくら政治的に振興策が採られても、斜陽の日本で未開分野の新規事業の立ち上げが成功するとは思えないのだが。

なんにしても、もはやどうにもならない、ポイントオブノーリターン越えてしまった、この没落国家。せめて早め早めに先を見据え、自分が浮かべる程度の板きれ一枚でもどこかに見つけて、がんばるしかあるまい。きみの今後の御活躍をお祈り申し上げます。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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