思想信条ではなく安全保障の問題:秘密保護法での捜査を!

2022.09.05

ライフ・ソーシャル

思想信条ではなく安全保障の問題:秘密保護法での捜査を!

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/日本を潰そうとする勢力は、国際問題に発展してしまう武力制圧よりも、経済問題から攻めてくる。この意味で、個人的な思想信条の自由とは切り離して、純粋に安全保障上の問題として、秘密保護法の厳格な適用と改正が急務なのではないか。/

世界征服をたくらむ組織、なんて、『007』か『仮面ライダー』の中の冗談だと思っていた。そんな組織がある、などと言ったら、それだけで、頭がおかしいと思われた。ところが、事実は映画やマンガより奇なり、ほんとにあったらしい。それも、幼稚園バスを襲う、とかではなく、議員秘書、それどころか本人が政治家になって、すでに国や地方の中枢に堂々と入り込んでいた。驚くばかりだ。

こうなると、それは、個人の思想信条の自由の問題ではなく、国家の安全保障の義務の問題だ。米国で前大統領トランプが家宅捜査され、いくつもの機密文章(の封筒だけ?)が押収されたが、日本でも、連中の身分が身分だけに、同じような疑いを抱くことにこそ、あまりある合理性があるのではないか。

2013年、日本においても、「秘密保護法(特定秘密の保護に関する法律)」ができた。元となった法律の通称が「スパイ防止法」だったように、元のものより「特定秘密」に事前の指定が必要になるなど、いろいろ限定されたとはいえ、要は、安全保障の観点から、利敵反日の間諜から情報を守ることを目的としている。

ところが、この法律には大きな穴があって、行政機関の長(総理や省庁大臣など)はもちろん、総理大臣補佐官、副大臣、大臣政務官なども、「適性評価」無しに特定秘密を取り扱えてしまう(第11条)。また、そもそもその「適性評価」そのものも、めちゃくちゃ緩く、前科や薬・酒・金の問題、破壊活動や不正貿易との関連さえ無ければ、取引先、さらにはその取引先が指名した者などでも、取引契約で定めればOK(第12条、第5条4)。こんなザルのような「適性評価」で、評価免除の総理を含め、これらの中に、利敵反日を思想信条として密かに活動している者がいない、などと、どうして言えるのか。

しかし、この「適性評価」が免除であろうと、「適性評価」でOKであろうと、漏洩の罰則は免れない(第23条)。まして、外国の利益もしくは自己の不正の利益を図り、または、我が国の安全もしくは国民の生命もしくは身体を害すべき用途に供する目的で、騙したり、盗んだりして特定秘密を取得した者は、懲役刑(第24条)。ただし、これも奇妙な条文で、国民の財産を害すべき用途に供するなら、この法律にひっかからない。昨今、東京五輪に関する不正授受の疑いが元総理だった大会組織委員会元会長にまで及ぶなどという政界のモラルの低下ぶりを見るにつけ、自分たちで(わざと)作ったカネ絡みの抜け道でなら、連中は何でもやりかねない、と疑いたくなるのが、多くの国民の実感だろう。

今日、経済もまた、安全保障の主要問題だ。いや、それどころか、武器や戦闘力以上に、為替や食料、エネルギーこそ、今日の国防の枢軸かもしれない。そして、日本を潰そうとする勢力は、国際問題に発展してしまう武力制圧よりも、これらの経済問題から攻めてくる。この意味で、個人的な思想信条の自由とは切り離して、純粋に安全保障上の問題として、秘密保護法の厳格な適用と改正が急務なのではないか。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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