大塚家具はどこへ行く

画像: David Stewart

2019.03.13

経営・マネジメント

大塚家具はどこへ行く

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

父娘で繰り広げた委任状争奪戦から約3年半。久美子社長の「アンチフォーカス戦略」が大塚家具にもたらしたのは業績悪化と急速な資金繰りの悪化である。今回の矢継ぎ早の提携策には派手さはあっても根本的な経営立て直しにはつながらない。打つべき手は他にある。

このことについては以前、当コラム記事で2度ほど採り上げ、この戦略方向性の間違いを指摘したことがある(でも同窓ゆえに心情的には頑張って欲しいという複雑な思いも同時に吐露した)。

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その戦略の行く末は小生が予想した通り非常に厳しい結果で、残念ながら同社はこの数年、業績悪化の道を突き進んできたようだ。この結果が示すのは第一に、久美子社長が狙った中級価格帯はもはや「ボリュームゾーン」ではなく、むしろ2極化する市場における縮小セグメントだということだ(図2参照)。そして第二に、久美子社長の戦略方針を嫌った富裕層既存客の多くが大塚家具から離反してしまった可能性が高いということだ。

注)なお、この中級価格帯で健闘している企業(ワイス・ワイスなど)も存在しているが、大塚家具にそうしたきめ細かな適応戦略は見当たらない。

よく経済評論家やコメンテータがやるような「ほーら私が言った通りでしょ」という自慢をするつもりは小生にはまったくない。ただ、「どうして軌道修正してくれなかったのか」と残念至極だ。そしてやはり残念だが同時に、この戦略的誤りの責任をとって久美子氏は社長を退くべきだということをはっきり申し上げたい。

そして袂を分かった父親・勝久氏(匠大塚の会長)に頭を下げて、可能ならば大塚家具の経営者に復帰してもらう(そして匠大塚と統合する)のがベストの策ではないか。勝久氏が匠大塚で実践してきた超高級路線の経験・ノウハウを活かして、高級路線に再度フォーカスし直すこと、これしか大塚家具が生き残る道はないと考える。


【追加補論】

小生は「大塚家具が昔のやり方に戻れば再建ができるだろう」と主張している訳ではない。むしろ久美子氏が経営権を握る以前の経営のままでは着実に業績は縮小に向かっていただろうことを理解している(だからこそ久美子氏は経営方針を大きく変えるべく父親に反旗を翻し、勝久氏を放逐したのだ)。

そして匠大塚での一部フロアで目立つ「成金趣味」的なゴテゴテとした装飾の照明器具・家具や、昔の日本家屋でしかしっくりこない伝統的な和家具が新しい世代の富裕層に訴求するとも思っていない。

しかしそれでも戦略方針としては、久美子社長の狙った中途半端な「アンチフォーカス戦略」を続けるより、富裕層を主顧客とする高級品に絞った「フォーカス戦略」に復帰すべきだと考える。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。新規事業の開発・推進、そして既存事業の収益改善を主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/               弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashinban/            最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/

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