大塚親子は誰と、そして何を闘っているのか

画像: r. nial bradshaw

2016.07.13

経営・マネジメント

大塚親子は誰と、そして何を闘っているのか

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

大塚家具を舞台にした「第一幕」、そして別々の会社として競う「第二幕」。いずれにおいても世間に溢れる「親子喧嘩」や「事業承継の失敗」といった見方は皮相に過ぎる。今や完全に別路線を歩もうとしている2人の経営者が率いる別々の「大塚」は、実は競合すらしていない。

2015年の春に起きた大塚家具の経営権を巡る委任状争奪戦で、長女の久美子社長に敗れた創業者の大塚勝久氏。世間の注目を集めたこの「第一幕」の騒動には後日談があり、勝久氏は長女の久美子社長が役員を務める資産管理会社に対し15億円分の社債の償還を求めた訴訟に全面勝訴しており、それと平行して保有する大塚家具株式の多くを巧みに市場で売却していた。

勝久氏はこれらで得られた資金を投じて「匠(たくみ)大塚」という新会社を立ち上げた。今年の4月に東京・日本橋にプロ客向けの「デザインオフィス」を開設したのに続き、6月には大塚家具創業の地・春日部に大型店をオープンした。数百メートルの距離に久美子社長が率いる大塚家具の店舗があるため、創業の地で親子が再び火花を散らすことがちょっとした評判を呼んだ。

この大塚親子の闘いの第二幕を面白おかしく「親子喧嘩再び」と囃し立てるネット上のコメントや記事が目立ったのは、ある意味当然だ。一連の関係者の動向をきちんと分析することもなく、その場その場で世間受けする表現を狙っているだけなのだから。

しかし大手のビジネス雑誌で「やはり事業承継というものは難しい」といったトーンの記事が散見されたのに対しては、小生は大いに違和感を覚えた。この一連の騒動をやはり「親子の争い」と捉え、創業者の果敢な闘争心をむしろ「成功体験から逃れられない」ために「まだ子供には任せられない」という創業者特有の心理のせいだと指摘していたからだ。

はっきり申し上げて、その捉え方は間違っていると思う。確かに、世の中の事業承継がスムーズに進まない大きな要因の一つは、指摘されるような創業者の心理である可能性は高いと思う。

しかしこの固有のケース、「久美子氏vs勝久氏」もしくは「大塚家具vs匠大塚」に関していえば、2人の経営者の戦略方針の違いが第一幕で経営権争いを生み、今は別の会社として業績を競う状況になっているのであって、たまたまその経営者が親子関係にあるのだ、と捉えるべきだと小生は考える。

この小生の見方は「第一幕」の時から変わらない。

http://www.insightnow.jp/article/8371 大塚家具の新戦略は理に適っているのか

ではその戦略方針の違いとは何か。詳しくは上記のURLで以前の記事を参照願いたいが、簡単に言ってしまうと、久美子氏の「一般大衆路線」 (決して「低価格品路線」ではない) vs 勝久氏の「高級路線」という構図だ。巨大店舗を交通至便の地に構えるという業態に惑わされて、両者を似たようなビジネスモデルだと勘違いしてはいけない。全く違うものなのだ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社。新規事業の開発・推進・見直しを中心としたコンサルティングを提供しています。https://www.pathfinders.co.jp/  弊社は、「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。https://www.pathfinders.co.jp/app-def/S-102/cms/rashinban  最近のインタビュー記事『ありがちな失敗パターンから学ぶ 新規事業の“正しい”取り組み方』がウェブに掲載されています。 https://inouz.jp/times/pathfinders-1/

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