都内有数の進学校である、広尾学園中学校・高等学校。東京大学や京都大学などの名門大学への進学のほか、スタンフォード大学など海外の大学に進学して国際舞台での活躍を目指す生徒が多いことで評判の学校だ。将来を担う人材を育てるために必要な学校経営とは、どのようなものなのか。2017年に理事長に就任した池田富一氏に、その詳細を聞いてみた。 (聞き手・仙石実・公認会計士、税理士/構成・Tokyo Edit 大住奈保子)
一般企業から学校経営の道へ
(仙石)本日はお時間をいただきありがとうございます。まず池田様のこれまでのご経歴と、2017年に理事長に就任されたきっかけについて、お教えいただけますでしょうか。
(池田)広尾学園に来るまでは、一般企業でマーケティングの仕事に携わっておりました。仕事はとても楽しかったのですが、業務に携わるうちに経営にも興味が出てくるようになりました。そんな中でご縁をいただけたのが、広尾学園での学校経営のお仕事だったんです。
その後いろいろな役割を経て理事長になりましたが、それは理事会でご指名いただいたからで、正直自分でもなぜ選ばれたのかわかりませんでした(笑)。しかし、せっかくご指名をいただいたのですから、私の能力的に務まるかどうかということは抜きにして、この機会を前向きにとらえて頑張っていこうと思いました。
(仙石)そうだったんですね。「理事長としてこうありたい」という、理想像はおありでしょうか。
(池田)世間一般の理事長というイメージとは違うかもしれませんが、私は理事長もどんどん現場に出ていくべきだと思っています。教職員と一枚岩になって、フレンドリーな関係の中で学校をつくっていきたい。だから常日頃から食事を共にしたりして、意見交換の場を積極的に設けるようにしています。
理事長という立場は負うべき責任は大きいと自覚しておりますが、普段は壁をつくらずに、対等な立場で運営を行うように心がけています。
(仙石)とても風通しのよい職場なんですね。広尾学園を今後長く続けていくために、心がけておられることはありますか。またそれに伴って、事業承継についてのお考えもお聞かせください。
(池田)学校を長期にわたって存続させるためには、教育の質を高めていくことが何より重要です。ただ「みんなで頑張ろう」という精神論だけで経営していたのでは、うまくいきません。
学校には学則定員というものがあり、生徒数の上限が決まっています。自然と学費にも上限が出てきますので、やりたいことすべてに対して無計画に投資をしていると、とても追いつかなくなってしまうんです。学校全体を俯瞰しつつ、今優先的に投資をすべきなのはどこかを見極めるバランス感覚が必要なのだと感じています。
事業を長く存続させるためには人材の確保も重要なテーマですが、これもステージごとに優先順位が変わってくるものだと思っています。広尾学園は12年前に校名変更をして共学化したのですが、その頃はまったく知名度のない学校でした。
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