新規事業における素朴な疑問 (10) 民主主義的態度を装うリーダー

画像: 小田原評定

2016.06.22

経営・マネジメント

新規事業における素朴な疑問 (10) 民主主義的態度を装うリーダー

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

経営者は孤独なもの。そして新規事業を背負うリーダーというのは経営者の気概を持って事業メンバーを引っ張っていく必要があり、政治家的な振る舞いは不要だ。ましてや「民主的組織運営」を装うだけの優柔不断さは害毒にしかならない。

経験値が少ないことにコンプレックスを持つ若きリーダーはさらに民主主義的なふるまいに及び、非常に危険な状況を招きかねない。この種のリーダーは怖いことに、一種の多数決で決めようとするかも知れない。つまり多数意見に従おうとするのだ。実は小生、そういう場面を目にしたことが何度かある(もちろん止めたが)。

多数派に従うことが正しいという保証などない。むしろ責任が曖昧になるだけで、禄でもない結果になりかねない。仮に結果オーライであっても、その組織にとって悪い前例を作ってしまう。

なぜこうした妙に「民主主義」的なふるまいに及ぶ若きリーダーたちが決して少なくないのか。実はいくつかの勉強会で、こうした経験を持つ人たちに(遠まわしではあるが)尋ねたことが何度かある。驚いたことに、彼らは別段おかしなことをしたとは思っていないのだ。それで組織が滑らかに回っていくならそのほうがよいではないか、という感覚なのだ。

どうやら「民主主義」的なふるまいというのが大人の正しい態度だと学校教育かクラブ活動で刷り込まれているのではないかというのが小生の仮説である。そして事業主導の経験がまだ少ない段階では、この過去の経験値に基づく方針でメンバーの信頼を勝ち取ろうとするのではないか。

さらに一部の先進的な組織運営例として、「エンパワーメント」などの言葉と共に「民主主義的」なやり方が日本にも紹介されてきた経緯もある。自分たちは頭ごなしに命令する「昭和オヤジ」たちとは違ってスマートなやり方ができるのだ、と考えたいのだろう。

しかし「民主主義的」運営では決して強い組織にはならないし、ましてやスピード重視の新規事業では致命的ですらある。やがて彼らも、この運営方針が企業経営、とりわけ新規事業の経営には向かないことを体験的に学習するのだ。

小生がよく存じ上げている、大企業で過去に新規事業をいくつか任され(その一部には手痛い失敗があり)、今や大きな事業を任されるようになった40代以上の人たちは皆、優柔不断でないのはもちろん、民主主義的態度を装うことなど決してない。
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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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