新規事業における素朴な疑問 (6) 曖昧な事業像の描き方

画像: Sacha Chua

2015.09.16

経営・マネジメント

新規事業における素朴な疑問 (6) 曖昧な事業像の描き方

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

新規事業に取り組む大企業の行動パターンに関する素朴な疑問シリーズ、その6つめは事業構想案の可視化のやり方のブレ。部門によって異なるどころか、同じ部門でも人によってバラバラ。しかも考察不足のせいもあって、何を言いたいのか分からないことさえある。

小生が手伝う新規事業開発プロジェクトでは、クライアントのニーズによってプロジェクトの枠組みも進め方もかなり違っている。

最初からある程度事業像らしきものが決まっていることも少なくない。しかし典型的なパターンとしては、ゼロベースで考えて複数の事業案を生み出したい、といった話になることがよくある。この場合、数グループに分かれて各グループで最低1つの事業構想案まで創出して欲しい、といった進め方をすることが多い。

最初の段階では思いつき程度なので、あまり表記法にはこだわらない。一つのグループで2つ3つ、中には4つも5つもアイディアが出てくることもよくあるので、あまり描き方に凝って時間を使い過ぎたり、せっかく新しいアイディアが浮かんできたのに前のアイディアを描き切る間に忘れてしまったり、などということになっては本末転倒だからだ。

たいていは短い説明を付けた簡単な関係図だが、ほとんど文字だけの説明ということも割とある。むしろアイディアそのものが独創的なのか、面白そう(または儲かりそう)なのか、実現性があるのか、といったことがまず大事である。

さらに議論していく過程で、モノになりそうな感覚が持てるアイディアに絞った上で、担当を決めて(大概は思いついた当人である)、他のグループにも説明・共有することで、より多くの人数を掛けてアイディアを膨らまそうとする。

そこで担当となった人に、「この事業アイディアを他のグループの人にも分かるよう、図示してみてください」とお願いする。そこで仮に描き方を指定しなければ、数日後に出てくるものの多くが、何をするビジネスなのかすら分からない、実に曖昧な図と煩雑な文字説明に溢れているものになると覚悟したほうがいい。

それが分かっているので、実際には共通の表記法に統一するようにしている。その際、小生が「どんな表し方をすると皆さんが共通的に理解できますか?」とメンバー全体に尋ねると、かなりの割合の人が戸惑った顔をする。不思議なことに、新規事業開発の歴史も長く実績もある大企業であっても同様だ。仮に「事業構想」の企画書フォーマットが決まっていても、なぜか肝心の「事業イメージ」の可視化のやり方を決めていないため、人によって描き方がバラバラなのだ。

「やったことがない」、「どんな描き方をすればいいのかわからない」というのはごく普通の反応だ。「僕、絵心がないので、誰か他の人にお願いしていいですか?」という楽しくトンチンカンな反応をしてくる人も結構いる。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。新規事業の開発・推進、そして既存事業の収益改善を主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/               弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashinban/            最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/

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