剪定されない新規事業開発は“根腐り”する

画像: Permaculture Association

2017.03.08

経営・マネジメント

剪定されない新規事業開発は“根腐り”する

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

新規事業案件が湧き出るに任せる会社と、継続検討案件を絞る会社。「歩留まり」には大きな違いが出る。新規事業にも思い切った「剪定」(せんてい)が必要だ。

広い意味で同業かつ似たような規模のA社とB社は、新規事業に対する経営者の態度と検討体制が対照的だ。

アイディアマンであるA社の経営者は事業ネタを色々と思いつくので、優秀な部下を担当者に選んではプロジェクトを興させ、その企画を詰めて事業に育てるよう命じている。役員にも新規事業と新製品をどんどん開発するよう叱咤激励し、その成果を人事評価にも取り入れると公言している。

お陰でA社の企画担当者たちは常に幾つかの新規事業プロジェクトを抱えており、社内外との打ち合わせと市場データの収集・分析に余念がない。A社の会議での議論は実に活発で社内は活気にあふれていると評判だ。

一方、研究肌のB社の経営者はもっぱら業務プロセスの改善に注力し、自ら新規事業のアイディアをひねり出すことはあまりないが、役職員には新規事業の創出を積極的に推奨している(この点はA社と同じ)。

B社がA社と大きく違うのは、プロジェクトを組んで正式に取り組み始めてから検証を踏まえて試行されるまでに10ケ月を超えてはならないという社内ルールを設定していることだ。それまでに立ち上がらない場合、原則的にプロジェクトでの検討を中断するという厳しさだ(ただしプロジェクト解散後もスカンクワーク方式で継続しているケースもあるらしい)。

その結果、B社の企画担当の人数はA社の半分程度しかいないにもかかわらず、担当者が抱えている新規事業のプロジェクト数は1つないしは2つ程度に収まっている。全体としてみると、同規模でありながら取り組んでいる新規事業はA社の数分の1だ。

しかしながら最近10年ほどの会社全体に占める新規事業の売上貢献割合を見てみると、A社ではわずかしかないのに対し、B社では常に一定以上を示している(同社では3年以内に立ち上がった事業を新規事業に分類している)。しかも新規事業群トータルでも着実に利益を出しており、会社全体での増益基調への貢献が認められる。

要はA社に比べB社の新規事業は「歩留まり」が圧倒的によいのだ。なぜだろうか。

A社とB社の人材レベルが同等と仮定したとき、一番有力と考えられる要因は、B社では担当者一人が抱える企画件数が少ない分だけ個々の案件に集中することができ、企画の品質も上がりやすいということだ。

集中できるということは、同時にスピードも上がり、その分だけ市場に早く出すことで競合に先行できる可能性も高まる。「10ケ月ルール」のせいでB社の担当はのんびりとできないため、検討スピード向上効果はさらに高まる。それに対しA社では進捗報告の予定も厳しく求められないし、ましてや時限制でもないため、決着をズルズルと先延ばししがちになるのだ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

当社は新規事業の開発・推進・見直しを中心とした戦略コンサルティング・サービスを提供しております。代表である私は、30年にわたる戦略コンサルティングと、実務での新規事業開発の経験を基に、企業の特性と事情に合わせた「実践的アプローチ」、「3倍速のスピード感」、「サイド・バイ・サイドの姿勢」を持って、経営者の思いを実現することを心掛けています。 新規事業やサービスの開発においては、テーマ探索~事業仮説開発~検証~試行といったプロセスに沿って一気通貫でご支援することもできますし、必要に応じて一部だけを抜き出して対応することもできます。 詳しくは弊社HPをご覧ください。ご登録いただければメルマガもお届けします。

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