新規事業における素朴な疑問(11) 部下に冒険させない管理職

画像: Clemens Vasters

2016.07.27

経営・マネジメント

新規事業における素朴な疑問(11) 部下に冒険させない管理職

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

新しい事業や斬新な商品の企画を上申しようとすると、「もっと調査せよ。計画をブラッシュアップせよ」と何度もやり直しをさせる上司。彼らにこうした保守的な行動をとらせるものは何か。

クルマと並んで戦後ニッポンの躍進とものづくり品質を代表した家電業界。その凋落振りを分析する研究論文や考察記事は過去にいくつも発行され、それぞれ非常に鋭い分析視点が示されている。例えば:

https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/6781.pdf

https://www.gov-book.or.jp/book/detail.php?product_id=265173

http://keieisha.zuuonline.com/archives/3513

これらで分析されている敗因には、デジタル化とモジュール化の進展が向かい風になった状況があり、垂直統合ビジネスモデルの陳腐化があり、グローバル市場の軽視とマーケティング力の弱さといった経営者の劣化があり、日本の人件費の高額さと長期にわたった超円高がありと、幾つもの複合的要因が組み合わされてしまったことはほぼ間違いない。

そんな中、ちょっと違った角度から面白い指摘をしている複数の記事に最近出遭った。それは新規の取り組みを部下にさせようとしない管理職が横行したからだというのだ。ニッポンの家電業界が世界市場に拡張していた時期には、新奇な発想を積極採用して新商品や新事業にしていたのが、ある時期以降はすっかり保守化したという指摘なのだ。

家電メーカーの企画部署や開発部門でそうした経験をした人たちの嘆き節がいくつも採り上げられていた。いわく「まったく新しい分野なので、いくら市場調査しても本当のところはやってみないと分からない。しかし上司は『さらに市場調査せよ、事業計画書を練り直せ』と繰り返すばかり。結局、他社に先行されてしまったことが何度もあった。でも彼らは出遅れの責任を取るどころか出世していった」といったものだ。

これは実は新規事業に関する典型的な問題で、家電業界に限る話ではない。そもそもなぜそれで出世できるのか、不思議な感じはするだろうが、本当だろう。既存ビジネスで収益を着実に上げている上に不確実な投資をしないのだから、短期的な収益は間違いなく上がる。保守的な管理職が出世できる訳は意外とシンプルだ。

本来、企業(enterprise)というものは不確定要素の大きい事業に大胆に取り組むための仕組みであるはずだが、近年の日本企業では、ROI(投資対効果)を錦の御旗にして「より確実な収益機会」をモノにする管理職が高く評価される傾向にある。その背景には、短期的利益を重視する株主資本主義の浸透がある。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

弊社は新規事業の開発・推進・見直しを中心とした戦略コンサルティング・サービスを提供しております。弊社のコンサルティングの特長は次の4つです。 1.独自の「イシュー分析」手法に基づき、「どういうロジックで、何を検討するのか」というワークプラン、および「誰がいつまでに何をするのか」というWBSチャートを初期段階から明示 ⇒ 迷わない。素早く、前もって動ける。 2.社内プロジェクトチームに少数のコンサルタントが入る混成チームで進める ⇒ メンバーへ刺激。 3.ハンズオン指導と作業分担の組み合わせで進める ⇒ スピード感とメンバー成長の両立。 4.(知識・経験依存でなく)「仮説思考」「ファクトベース」を重視 ⇒ 科学的アプローチによる納得性。 詳しくは弊社HPをご覧ください。ご登録いただければメルマガもお届けします。

フォロー フォローして日沖 博道の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。