新規事業における素朴な疑問 (8) 軽視される基本仮説の検証

画像: Video Volunteers

2015.11.25

経営・マネジメント

新規事業における素朴な疑問 (8) 軽視される基本仮説の検証

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

新ビジネスの構想案を練る段階において時折発生する、ちょっと困った傾向というのが、基本仮説の検証をおざなりに済ましてしまい、協業候補や初期顧客への打診を進めようとしたがることだ。ビジネスモデルとしてユニークで面白そうであればあるほど、前のめりになってしまいがちだが、「本当にそうか?」と基本的な部分を検証する態度が不可欠だ。

ここで「基本仮説」と呼ぶのは、そのビジネスが新事業として成立するための基本的な前提条件のことである。典型的には3つほどあって、1)本当の顧客は誰で、その本質的ニーズが十分強大なのか、2)既存の流通の仕組みや市場プレイヤーたちの対応に重大な不備・不満があるのか、3)自社のソリューション(解決法)は十分効果的で納得性のあるものなのか、といったものだ。

最近もあるプロジェクトの一つのチームで、散々議論して練り上げた事業アイディアに関して小生がこの基本仮説の検証具合をしつこく追及していると、メンバーの一人が「もう十分なんじゃないですか?先に進みましょうよ」とうんざりした表情で訴えた。

しかし実際のところ、ヒアリングの数だけは重ねていたが、1)2)3)とも十分といえる証拠・証言をほとんど得られていなかったため、小生はかなり厳しい表現で検証継続の必要性を訴え、結局チームメンバーにはその証言集めにしばらく集中してもらうことにした。

ある意味、こうした発言はやる気の表れでもあるのだが、この部分の検証をいい加減に済ませてフライング気味に「先に進む」と、どこかで根本部分が怪しくなって後戻りせざるを得ない事態が予想されるからだ。小生も顧客先で時折耳にするし、過去には推進担当者としてえらい目に遭ったこともある。

それに打診された協業候補先からすると、とんでもない迷惑を被りかねない。実は根拠の薄い思いつきを聞かされただけに過ぎないのに、真剣に検討を重ねたあげく、次のミーティングで「ああ、あれですか。よく考えてみると難しいと思えてきましてね…」と聞かされるのでは、噴飯ものだ。次からはまともに取り合ってくれないだろう。

実際の効用としても、基本仮説の検証を進めているうちに問題点が明確になって構想案の修正やブラッシュアップが進むことは多い。そして担当するメンバー間でのイメージ共有が着実に進むため、「ええ?そういう話だったの?」といった類の食い違いはかなり解消できるので、その次のステップに進んだ際の迷走や後戻りは抑制される。

では基本仮説の検証というのはどんなことをするのか、最近有名になってきたUberを例に使って簡単にご説明しよう。Uberというのは米国生まれの配車サービスなのだが、日本への導入を検討するといったシチュエーションを想像していただきたい(実際には既に導入されているが)。

実はUberには大きく分けると2つのサービスタイプがあり、プロのタクシードライバーの配車サービスであるUber BLACKと、素人のドライバーを配車するuberXがある。後者はいわゆる「白タク」に相当するので世界的にも物議を醸しているし、日本では現実的に一部の「特区」でないと実現が難しいとされるので、とりあえずここでの想定対象は前者のUber BLACKとしよう。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。新規事業の開発・推進・見直しを中心としたコンサルティングを提供しています。https://www.pathfinders.co.jp/  弊社は、「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。経営者の方々の参加を歓迎致します。https://www.pathfinders.co.jp/app-def/S-102/cms/rashinban  最近のインタビュー記事『ありがちな失敗パターンから学ぶ 新規事業の“正しい”取り組み方』がウェブに掲載されています。経営者またはその予備軍の方々にご覧いただきたく。無料特典(ホワイトペーパー)もついています。 https://inouz.jp/times/pathfinders-1/ https://inouz.jp/times/pathfinders-2/  『ベテラン幹部を納得させろ! ~次世代のエースになるための6ステップ~』がアマゾンのオンデマンド書籍として上梓されました。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください。

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