三菱自動車(三菱自)の燃費データの不正計測・公表問題をきっかけに、日産が三菱自へ第三者出資することで傘下に収めることになった。電光石火で話を決めた日産・ゴーン社長の辣腕振りに感嘆する声が巷に溢れるのは当然だが、迅速に話をまとめた三菱自・益子会長の経営判断にも拍手を送りたい。
再建に向けて彼らが何とか気持ちを切らさずに仕事を誠実にやり続けるために最低限必要なことは、その頑張りが無駄に終わらないと信じることができることだ(これがない場合、人間というものは意外とたやすくパニックもしくは投げやりな気持ちに陥ってしまうものだ)。少なくとも日産傘下に入ることで、そう簡単には倒産しないという最後の拠り所を社員に与えることができ、益子会長はほっとしたはずだ。
そして肝心なことだが、この燃費不正問題をもたらした根本原因である「燃費競争に勝ち抜くだけの技術者と技術資産が三菱自には不足している」という問題が、傘下入りした日産からの技術者派遣で(少なくとも中期的には)かなり解消する可能性が高いことだ。
日産からの第三者増資を発表した記者会見で、益子会長が真っ先に言及した提携の期待成果が日産からの技術者派遣だったのが、彼の頭の中を占めていた自社のボトルネックの在処を示していると、小生には思えた。
今回、益子会長は経営者として正しい決断をした。日産との資本提携が完了し日産からの役員を受け入れたのち、彼は経営から退くことを言明している。自社の「嘘つき体質」を変革できなかった罪は消えないとはいえ、最後に彼はすべきことをして引退する。拍手を送りたい。
(本稿はブログ「ビジネスモデルとBPMを考える」の記事を基に追記修正したものです)。
経営・事業戦略
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
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