飲食店での現金取り扱いに潜むリスク

画像: Franklin Heijnen

2016.10.19

経営・マネジメント

飲食店での現金取り扱いに潜むリスク

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

北欧および北米で非現金決済へのシフトが急激に進んだ理由は、セキュリティとコスト、そして衛生面だ。特に最後の理由は潔癖症大国・ニッポンでも無視できないものになろう。

あるプロジェクトで調べたところ、スウェーデンでは店での支払方法の9割以上がクレジットカードなど非現金決済だと知って驚いた。ベネルクス3国や北欧全体でも似たような状況で、都会において現金で支払うのは他国から来た観光客ぐらいだという。クレジットカード大国である米国以上の現金離れがこれらの地では近年急速に進んでいるのだ。

北欧および北米で非現金シフトが急激に進んだ理由たるや、店にとってのセキュリティとコスト、そして衛生面からなのだ。

店に現金を大量に置いておくと、強盗に狙われる恐れもあり、従業員がくすねる恐れもあるので、経営者としては安心できない。そして偽造札でないかもチェックしなければいけないので、意外と現金というのは取り扱いコストが高い。さらに飲食店であれば、従業員が硬貨などを扱った手で食べ物を触ったり配膳したりするのを、客が快く思わないというのだ。言われてみると合理的なのである。

ちなみにこれら北欧やベネルクス諸国では、ユーザーにとってクレジット/デビッドカードを使えない店がごく限られており(最近はむしろ「現金取扱なし」が目立つようになってきているという)、銀行が早くから電子決済への移行を進め、店舗にとっての利用コストを引き下げてきた経緯がある。

一方、日本ではどうか。調査主体によって若干の違いはあるが、2015年時点でクレジットカード+デビッドカードで16~18%、Suicaやエディ、そしてIDなどその他の電子決済手段(調べていただくとすぐに分かるが、笑えるほど多種類である)を合わせてもようやく20%程度だという。これでも近年その割合は着実に増加中なのだが、OECD加盟国の中ではイタリアと並んで最低レベルにランクされる。

理由は幾つか挙げられる。安全な日本では消費者の多くは現金を持ち歩くことに大した不安を感じていないし、街角に様々な(コインを使う)自販機が普及している。店舗側としては、クレジットカードの手数料が世界的にも高い水準にあり(後述)、経営的に無視できないコスト負担を強いられる。

しかしながらよく考えてみると少々不思議である。日本人は世界的にみても稀な「潔癖症」民族である。他人の触ったエスカレータの手すりやつり革に摑まるのさえ嫌がる人が少なくないくらいだ。

その日本人の大半が、どこの誰とも知れない他人の触った硬貨を行きずりの店とやり取りし、しかも飲食店の従業員がその現金の受け取りをした素手で配膳したり調理したりするのを平然と受け入れているのだ。これは不思議といえば不思議な状況である。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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