大量生産した商品を大量販売するために、消費者とどのようなコミュニケーションを持つかがマーケティングの大きなテーマである。中国生産ビジネスにマーケティングは必要なかったが、中国市場参入にはマーケティングが不可欠である。
1.中国市場開拓には「マーケティング」が必要
「マーケティング」は、大量生産商品を大量販売するための戦略として始まった。「マーケティング」の内容は多様であり、広告宣伝、パッケージデザイン、市場調査、商品開発、流通システム、販売方法等、企画生産から販売、サービス、顧客とのコミュニケーションや情報伝達など、あらゆる分野に及ぶ。しかし、「マーケティング」の基本はサプライヤーが最終消費者に商品やサービス、情報を訴求することと言ってもいいだろう。
中国は日本の製造業のノウハウを導入し、日本市場へ輸出することで経済発展の礎を築いた。日本輸出を行っている企業は、日本人が企画した日本市場向けの商品を生産するだけであり、「マーケティング」は必要なかった。
日本側も「低廉な中国生産」という新たな生産システムに熱狂し、「マーケティング」への関心は低下した。消費者に安くて品質の良い製品を供給することが、最大のマーケティング戦略であり、中国生産はそれを可能にしたのだ。つまり、中国生産の商品を日本市場で販売するというビジネスモデルにおいては、日中共に「マーケティング」の必要性が希薄だったのである。
しかし、時代は変化し、中国は世界の工場であるだけでなく、世界の市場として認識されるようになった。つまり、中国生産の商品を中国市場で販売する。あるいは、日本製品を中国市場で販売するという新たなビジネスモデルを模索するに至ったのである。
これは、中国内販を行っている中国企業も同様だ。輸出向けOEM生産では、マーケティング活動は必要ないが、中国市場で販売するには中国在住の消費者に対してマーケティング活動が必要になる。
中国のファッション業界関係者と話していると「日本企業はプロモーションを行っていないので、中国での認知度が低く、それが売れない原因だ」という話が頻繁に出てくる。しかし、本当の課題は、プロモーションだけではない。トータルなマーケティング活動が必要なのであり、マーケティング活動の中で特にプロモーションが足りないと指摘されているのだ。
1991年、私は韓国財閥系アパレル企業にコンサルティングに入っていた。彼らは、マーケティング室創設の計画を立て、日本のアパレル企業がどんなマーケティング活動をどのような組織で行っているのかを知りたがっていた。当時の私は、なぜ彼らが「マーケティング」と言い出したのか、正確に理解できなかった。アメリカ留学組のアメリカかぶれの発案だと思ったのだ。
しかし、今になって彼らの考え方が理解できるようになった。輸出産業から内需に転換した韓国アパレル企業は初めて消費者と向き合うことになった。しかし、どのように向き合えばいいのか、という方法が分からなかったに違いない。一方、ドメスティック市場で育った日本人にしてみれば、消費者ニーズに応えるのは常識であり、あえてマーケティング室など作る必要性を感じていなかった。「ファッションの流れは肌で感じるもの」という認識であり、日本ではそれで十分だったのである。(続く)
「中国マーケティングチーム」創設の勧め
2008.04.12
2008.04.12
2008.04.12
2008.01.24
2008.01.24