「中国マーケティングチーム」創設の勧め(3/5)

2008.04.12

経営・マネジメント

「中国マーケティングチーム」創設の勧め(3/5)

坂口 昌章

ファッションビジネスの主導権が川上から川下へ移るにつれ、抽象的なマーケティングよりも、合理化や低コストを実現する海外生産や情報システム導入へと企業の軸足は移っていった。

3.日本からマーケティング室が消えた理由
 ファッションは大量生産大量消費の時代から、個性化、差別化の時代へと変化した。80年代にはDCブランドブームが起き、90年代にはインポートブランドブームが起きる。マーケティングよりも時代の変化に対応した新業態開発が重要であり、ファッションマーケティングの主導権も川上から川下へと移行していった。
 大上段に振りかぶって社会環境の変化や消費者意識の変化を論じるよりも、小売店の店頭を観察し、セグメントされたファッション雑誌を見ることで、マーケット変化は実感できる。また、プロモーションもテレビCMのようなマスプロモーションではなく、より限定された顧客にダイレクトに訴求する方法に変わっていった。いつしか「マーケティング」という言葉もあまり使われなくなり、「マーケティング」セクションも、販促、展示会の企画運営等のスタッフ部門になっていったのである。
 また、最近の10年間は前述したように、マーケティングよりも中国生産や輸入などの生産調達面での変化が目立つ時代だった。また、ITの進展により、店頭管理、顧客管理のシステム化も進んだ。
 こうした時代の急激な変化は「マーケティン」のポジションを相対的に低下させることとなった。抽象的なマーケティング論よりも、具体的なコスト削減による低価格戦略の方が売上に直結する。また、消費者像を研究するよりも、各店の売上や在庫の単品管理をリアルタイムで把握できるようなシステムを導入する方がはるかに店頭効率を上げることにつながるのだ。
 また、海外生産や輸入は商社に、システム導入はシステムベンダーに、というように、アウトソーシングの割合が増え、それに伴い、社内の合理化が進められ、直接売上に影響しないスタッフ部門からリストラが行なわた。かくして、企業内から「マーケティング」という言葉が聞かれなくなったのである。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。