「中国マーケティングチーム」創設の勧め(4/5)

2008.04.12

経営・マネジメント

「中国マーケティングチーム」創設の勧め(4/5)

坂口 昌章

中国はマスプロモーション全盛の時代であり、中国アパレルは様々な問題や課題に直面している。彼らの直面している問題を解決するようなソリューションサービスが求められている。

4.中国企業が求めるもの
 現在、中国はマスプロモーション全盛の時代である。テレビCMなど、マス市場に向けたマスプロモーションが効果的だ。利益のほとんどをプロモーションにつぎ込み、一気に知名度を上げて、大成功した企業も少なくない。つまり、日本で「マーケティング」が有効に機能していた時代と同じ次元にいるのだ。
 そういう荒っぽいビジネスが存在すると同時に、世界の一流企業、一流ブランドが次々と中国市場に上陸している。経験の少ない中国企業は市場全体の成長に支えられ、順調に成長を続けているが、近い将来、海外企業や海外ブランドとの厳しい競合が待っていることは自明のことだ。
 そうしたノウハウの欠如を補うために、海外企業とのライセンスビジネスや提携、海外デザイナーとの提携を急いでいる中国アパレル企業は多い。日本では、内需をターゲットとするアパレル企業が未熟な段階に、過去の輸出ビジネスで資本やノウハウを蓄えた大手原糸メーカー、工業用ミシンメーカー等が存在し、ノウハウを提供していた。しかし、中国は全てのサプライチェーンが同時にスタートした。輸出で成長した企業も、自らのノウハウや資本を蓄積する前に、海外から競合企業が押し寄せた。そして、急成長する国内市場の中でグローバルなビジネス競争が起きているのである。
 その意味では、日本企業がかっての大手原糸メーカーのように、中国企業にノウハウを与えることで、共に成長する可能性も生じてくるのではないだろうか。
 現在の日本は「マーケティング」よりも、情報やシステムに投資している。社会背景や消費者意識の変化を解説するよりも、商品そのもののスペック、性能、価格を提示することを重視している。取引相手もプロであり、余計な解説は必要ない。
 しかし、中国では事情が異なる。たとえば、欧米のある合繊メーカーは、中国アパレル企業に対して5~6名のチームで訪問する。そして、「マーケティング」のレクチャーを行なう。即ち、マーケット環境の変化、海外トレンド情報の分析、競合企業の動向の背景を説明した上で、自社の商品開発コンセプトを解説し、その後、初めて具体的な商品をプレゼンテーションするのである。中国企業にとって、こうした「マーケティング」チームの訪問はとても勉強になるので歓迎される。そして、教える者と教わる者との間にば信頼関係が生じる。同じ生地を仕入れるのならば、勉強になる相手と付き合いたいし、そういうメーカーから素材を仕入れたいと考えるのは不思議ではない。
 一方、日本企業は日本国内と同様のアプローチを行なっている。即ち、いきなり生地サンプルを見せ、スペックや価格を説明する。そして、品質の高さを訴求するのだ。しかし、多くの中国アパレル企業の経営者や仕入担当者には専門知識がない。どれも同じように見える合繊の生地の区別はつかないだろう。また、本業であるアパレルの企画生産についても、多くの課題と悩みを抱えている。彼らが欲しているのは、製品の説明ではない。自らが悩んでいること、直面している課題のヒントを欲しているのである。
 「信頼できない相手とは取引したくないし、勉強にならない相手とは商談するのも嫌だ」というのが、一般的な中国アパレルの担当者の発言である。中国には中国のニーズがあり、中国でビジネスをするからには、中国のニーズに応えなければならない。

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