Uberについての誤解と期待

画像: Mighty Travels

2016.03.09

経営・マネジメント

Uberについての誤解と期待

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

Uberについては日本では過大評価が先行しており、その既存サービスが本当に日本社会にインパクトのある変革をもたらすのかについては疑問がある。むしろその先に登場する新しいサービスにこそ期待したい。

世界各国で人気を博すと同時に物議を醸している、白タクを中心とする個人ドライバーと利用者をつなげる“UberX”ならば、既存タクシーよりも安い料金を提示できよう。その場合はずっと人気が出るだろうが、海外と同じ仕様(二種免許の非保有者がドライバーでもOK)では「白タクという違法行為を誘発している」ということで国交省からサービス中止を求められることも間違いない。

日本市場でそれを避けるためには、二種免許保有者を保有する個人タクシー事業者を中心に加盟ドライバーを募集するしかなかろう。しかし個人タクシーの事業者というのは法人タクシー等の運転経験が10年以上あることが要件なので、高齢化が進んでおり、Uberのようなハイテクものに対する毛嫌いも少なからずあろう。多分、日本でのUberXの立ち上げは容易でないと想定できる。

この制約を前提に考えると、“Uber Black”と白タク要素抜きの“UberXもどき”だけでは、日本市場でのインパクトはそれほど大きくないと言わざるを得ない。

何となれば結局、日本の都会ではタクシーはかなり捉まえやすく、世界水準から云えば圧倒的に均一で高品質なサービスだからだ。つまり元々日本でのタクシーに関しては、料金が高いこと以外は特に大きな不満点はないのだ。

しかも一部のタクシー会社はスマホによる配車アプリを既に配布しており、Uberに近いサービスレベルを実現できつつある。現在、日本の既存タクシー業界も再編が進む過程で、サービスレベルやシステム構築力に問題のあった中堅・中小会社が淘汰されつつあり、結果として全体のサービスレベルは底上げされつつある。

既に日本でリリースされているUber Black(ハイヤー会社から派遣されたドライバーと車を利用)のサービスレベルが高いことは事実だが、既存のタクシー利用者がこぞってUberへの利用切り替えをする事態には至っていないし、今後もそうはなりそうもないというのが小生の見立てである。

ここからは少し別の、今後の新サービス展開の話をしよう。一つには先に触れたUberXだ。実は、米国のみで展開している競合のLyft社が始めたpeer-to-peerサービスのパクリなのだが、世界展開しているUberのほうが圧倒的に認知度が高い。

既に述べたように、(世界市場と違って)日本では白タクが公に認められるだけの社会的環境にはないし、日本の利用者も「素人ドライバーが小遣い稼ぎのため、週に数日だけ街中を走らせる」と知ったら敬遠する可能性は高い。しかしそれは他の選択肢が豊富にある都会での話だ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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