新規事業における素朴な疑問 (7) 向かないタイプをアサインしがち

画像: USAFE AFAFRICA

2015.10.26

経営・マネジメント

新規事業における素朴な疑問 (7) 向かないタイプをアサインしがち

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

あなたは営業部門の責任者だ。来年の人事異動に向けて企画部門から、「新規事業の開発・推進の担当者を営業部門からどうしても1人は出してくれ」と言ってきている。本音は誰も出したくないが、社長の肝いりなので断るわけにはいかない。迷った挙句、「分析もよくできて優秀なはずだが、お客からは今一つ好かれず、数字が伸び悩んでいる」A君の顔が浮かんだ…。

間違っていたら素直に謝り、他人のせいには決してしないことが新規事業担当者として最低限の条件だ。こうした素の人間性を信頼されてこそ、見返りの保証がなくとも協力してもらえる。自ら汗をかくことをいとわず相手の懐に入っていくことが、結局は本音を聞き出す近道となる。

4.目の前にある答(らしきもの)に飛びつく

これは物事に対する考え方であり、仮説-検証に対する態度である。「新規事業に向かない」人は、ウサギとカメの寓話でいえばウサギのタイプである。

有名校を卒業したことを自慢する人にありがちだが、新規事業にも「絶対的正解がある」と漠然と信じているためか、往々にして権威がある人(学者、著名な経済評論家など)が「画期的な技術だ」「これが流行る」などと言っているのを盲目的に信じて、それに飛びついてしまう。ましてや「儲かるらしい」といった目先の利益がちらつくと、矢も楯もたまらない。「これが答だ」とばかりに自分なりの結論に飛びついてしまう。

そのため、自分の立てている仮説は何を前提にしているのか、何を検証すべきなのかを考えることをすっ飛ばして、実現のための対応策だけを考えようとする。その方向性に合わない証言や事実が出てきても、得意のこじつけ論理で粉砕してしまう。それで事業を実行する段になって「想定外」の事態が噴出することになると、会社としては痛手が大きい。

「新規事業に向く」人というのは、ウサギとカメの寓話でいえばカメである。どんな権威のある人の意見でも批判的な目で受け取り、自分なりに理解すべく咀嚼しようとする。本質的な意味合いは何か、根源的に顧客にとっての価値につながるのか、を自問自答する。安易な答が道端に転がっているわけではないと分かっているため、市場関係者へのヒアリングなどにより仮説検証-再構築を地道に繰り返し、よりよい方向を見出そうとする。

ウサギの目にはまどろっこしいように映るが、常に着実に前進するので、結局はこれが早道なのだ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。新規事業の開発・推進、そして既存事業の収益改善を主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/               弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashinban/            最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/

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