面接で人を見抜けるはずがない

画像: PhotoAC acworks

2015.10.30

組織・人材

面接で人を見抜けるはずがない

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長 /一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

要件の設定と質問の仕方を変えるだけで見抜けるようになるほど、人間は単純ではない。

まっとうな人なら、全てのマネジャーが部下の人事考課の際にいつも「評価は難しい」と思う。どのような会社の取締役会であっても、誰を昇進させるか、誰にどのような役割を担ってもらうかに頭を悩ませ、議論が尽きない。このように評価というものは、何年も一緒に働き、日ごろ顔をつき合わせて仕事をしている人に対してであっても容易に行えるものではない。それどころか、考えに考えた末に下した評価が本人や関係者の納得を得られなかったり、議論を尽くして行った昇進や人事異動が失敗してしまったりする。

それなのに、数十分の面接で応募者が見抜けるというのは、おかしな話だ。色々な面接法があるようだが、要件の設定と質問の仕方を変えるだけで見抜けるようになるほど、人間は単純ではない。そもそも、面接官は人間なので先入観や偏見から逃れることはできず、また、それぞれに異なる価値観を持っており、さらに目を開いて対話をしているので相手の視覚的印象にも大いに左右されるわけで、評価の結果に影響を与える要素は非常に多い。「こう訊いて、こう答えたら、こういう特性である」などという判断が可能だと考える人がいるのが不思議である。

社内のよく知っている人に対する評価に悩む一方で、初対面の応募者の評価はできる(短時間で見抜ける)と思うのは何故だろうか。おそらく、心のどこかで応募者を見下しているからだ。社内の人であれ応募者であれ、相手が人間である以上、その評価は等しく難しいのが当然であるのに、応募者なら短時間で見抜けると思うのは、社内の人間に比べて応募者を人として尊重していない証拠である。言い方を換えれば、応募者に対するリスペクトが足りない人ほど、「見抜ける」と考えがちになる。

だいたい、物事はやればやるほどその奥深さを知り、迷いが生じ、分からなくなってくるものである。分かったような顔をして、自分でデキルると言う人に限って「ナンチャッテ」であることが多い。面接も同じで、やればやるほど人間の深さや多様性に気づき、数十分で人を判断することなどできるはずがないと悟る。そうして、面接官とは正確な判断ができないのに合否をつけねばならない因果な仕事なのだと理解できたときに、応募者に対して謙虚になれる。だからせめて精一杯、質問力・対話力を磨こうとするが、それでも「見抜ける」ことは決してない。

「私はこれまで何千人の面接をしてきており、面接でその人を見抜くことができる」と言う人がいたら(いるが・・・)、その人を人事考課担当にして、例えばコンピテンシー面接とやらを全社員にやってもらえばよい。誰もが納得する評価、失敗のない人事異動、昇進・昇格を実現してくれるだろう。採用担当をしてもらったら、ミスマッチがなく、全員がすくすくと予想通りに育っていくはずだ。そんな神のような人がいるかどうか考えてみれば簡単な話である。面接なんかで人を見抜けるはずはないのだ。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長 /一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革・健康経営など)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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