新規事業における素朴な疑問 (5) 共有化されない失敗体験

画像: Christopher Michel

2015.09.10

経営・マネジメント

新規事業における素朴な疑問 (5) 共有化されない失敗体験

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

新規事業に取り組む大企業の行動パターンに関する素朴な疑問シリーズ、その5つめは過去に新規事業で失敗した経験からの組織学習。こんな絶好の教材はないのに、多くの日本企業は十分には活用できていない。

一つは先に述べたように、これから新規事業に取り組む人たちに、用心すべきポイントをより鮮明に伝えることができる。もう一つは、実は失敗したばかりのご当人たちにとっても、より客観的な「出来事の消化」にもなり、前向きになるきっかけにもなるものだ。

なぜそんなに確信を持って言えるのか。実はこうした仕事柄、小生は大企業での経験豊富な方々とお話しする機会があり、そうした場で過去の新規事業での失敗体験をお話しいただくケースが少なくない。

彼らは「もうすっかり時効ですが、部下にはなかなか話せず…」と言いながら、とんでもない失敗を明るく話してくれる。そして失敗を他人に話すことで、その時の自分を客観視できると皆さん仰る。

その意味では、こうした失敗体験の共有化を行うタイミングというものはよく考えるべきだ。

あまりに時間が経ち過ぎていては細部を忘れてしまっているかも知れない。それでは体験談に迫力がなくなるか、脚色が入りかねない。でもあまりに直後で、本人たちも消化し切れていない状態だと、客観性に欠ける。悔しさが勝って、「あいつが悪い」とか「なぜ本社連中は助けてくれなかったのか」などという恨み節を振り回されても、誰も得るものはない。

したがって、少しだけ冷却期間を置いてから社内共有をするのがベストだと思う。

また、当人が一方的に話すばかりでも盛り上がらないし、聴講者とのQ&Aばかりでも論点が偏ってしまいかねない。うまくファシリテートしてあげる人がいると、こうしたセッションが有意義な場となる。

最初は新規事業の担当部署だけでもいいので、こうした試みを始めてみないだろうか

(本記事は2014年11月17日に掲載されたものを再編集しております)

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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