新規事業における素朴な疑問 (3) 一貫しない取捨選択基準

画像: SparkFun Electronics

2015.08.27

経営・マネジメント

新規事業における素朴な疑問 (3) 一貫しない取捨選択基準

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

新規事業に取り組む企業の行動パターンに関する素朴な疑問シリーズ、その3つめは事業テーマの採り上げ方と絞り方。目先の景気や世の中の流行、直近の業績のブレに任せて戦略方針もなしに変動させていると、中長期的にみると無駄が大きいという課題である。

新規事業に関する永遠の課題とも云えるのは、「本業とのバランス」ではないだろうか。

本業が絶好調という場合はともかく、競争も激しく利益もなかなか上がらない時は悩みどきだ。それなら新しい柱を早く見つけて、今の本業が傾いても会社が倒れないようにしておくべきではないか。いやいや、そんな苦しい時だからこそ、全社を傾けて本業に注力して苦境を突破すべきだ、云々。どちらにも一理ありそうだ。

もちろん、原則はシンプルだと思う。本業の回復・伸長が最優先で、新規事業の開発・展開のために本業を犠牲にするというのは邪道である、と。

しかしながらその邪道が求められる特異なケースもあり得る。例えば、本業たる銀塩フィルム市場が急速に消えつつあった時期の富士フィルムにとって、新規事業の早急な立ち上げ・収益化は何より最優先だったはずだ。でもこれはあくまで「例外」だ。

問題は、個々の企業が直面する状況が「原則」と「例外」の間の何処なのか、という話だ。これこそ経営戦略の中核テーマとして経営者の高度な判断に委ねられるべきものだ。

大半のニッポン企業は今、景気が回復して一息ついている、もしくはさらにその先を見つめる余裕ができたタイミングではないだろうか。この2年ほど、弊社でも新規事業開発・展開に関する相談件数が明らかに増えている。

喜ばしい状況ではあるが、これまでの新規事業への取り組みをヒアリングする中で思い知らされるのは、かなりアドホックな取捨選択を行ってきた、過去の実態だ。

第一の問題パターンは、そもそもどうしてこういう分野・テーマで新事業を始めたのか、理解に苦しむものだ。

自社の既存領域とまったく相乗効果を見込めそうにない領域にいきなり落下傘的に新事業投資を始めるケースなどだ。さすがにバブル経済の時に散々やって懲りた記憶が残っている企業ではあまり見かけず、どちらかというと若くやんちゃな経営者に率いられる新興オーナー企業に時折見られる現象だ。経営者が知人やセミナーなどから仕入れた情報に基づいてノリで始めさせてしまったため、誰も止められなかったといったケースが典型的だ。

第二の問題パターンは、(一つひとつのテーマはそれなりにその企業の既存領域と関連があるのだが)とにかくテーマ数が多過ぎて十分なリソースを割けない、または逆に一律に絞ってしまったので、現在ほとんど有望な手持ちテーマがないという状況だ。

前者の状況は前回の“「多重兼務」担当者が多過ぎる”という稿にても触れ、「掛け持ち」度の高いメンバーばかりのため、新規事業開発プロジェクトの質とスピードが劣化するという課題を主に採り上げたが、本格展開後も同様だ。せっかく立ちあげた其々の新規事業が、リソース不足のために競合に敗れてしまうリスクが高くなる。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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