新宿伊勢丹の業績アップに最も貢献したのは誰?

画像: Zengame

2014.08.11

経営・マネジメント

新宿伊勢丹の業績アップに最も貢献したのは誰?

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

風が吹けば桶屋が儲かる。あいつらを儲けさせるつもりじゃなかったのに、という自嘲の声が…。

つまり従来は渋谷の東急や西武、丸井といった店に勤務後に寄っていた東急東横線沿線在住のOLなどが、渋谷の代わりに新宿三丁目駅で乗り換えて、そのついでに伊勢丹に寄るようになったのだ。そして昼間は、東急沿線のマダムたちが渋谷で降りずに、一気に新宿三丁目まで直通で出掛け、お友達とお茶するようになったということだろう。

実際、小生の知人も数人、「以前は渋谷乗り換えだったけど、今は新宿三丁目乗り換えで通勤している」と証言している。直通運転化によりこれほど人の流れが大きく変わった例は珍しいかも知れない。

でもなぜ渋谷が嫌われて、新宿三丁目に人が流れたのだろうか。ずばり、渋谷駅が不便になったからだ。

小生も東急東横線沿線住民だが、渋谷駅で半蔵門線に乗り換えようとすると、以前より距離的には近いはずなのに通路が狭くなったため、人の渋滞が発生してかえって時間を食うようになった。

ましてや、地上の離れた位置にあるJRや銀座線もしくは京王井の頭線に乗り換えようとすると、地下5 階から分かりづらい通路を延々と移動させられるため、辟易することになる。JR渋谷駅の乗降客数が激減したのは実感として頷ける。

同様に、東急沿線住民が帰りがけにどこかで友人と待ち合わせをするようなことを考えたら、以前だったら渋谷駅中心に想定しただろうが、地上との往復は厄介だし、あの「地下迷宮」駅ではどこをどう行けば目的地に向かえるのか、そして帰り道でまごつかないか、自信が持てない人も多いだろう。何割かの人は「副都心線沿いのどこか他の駅がいい」となり、それが新宿三丁目なのだろう。

ではこうした状況を東急電鉄では予想したのだろうか?ましてや一部の噂にあるように、「ライバルであるJRの売り上げを減らすために意図して行った改悪だ」との意見は的を得ているのだろうか?小生はそうは思わない。

渋谷という街は「東急村」とも称されるほど東急電鉄とそのグループにとっての本拠地であり、様々な関係施設が集約する宝の地だ。その渋谷を利用するお客さんの数が減るということは、JRだけでなく東急グループにとっても大きな痛手のはずだ。

ただ、今回の直通化に伴う改造により渋谷駅が恐ろしいほど複雑化することを事前に理解できなかったほど東急電鉄の人々が愚かであったとは、とても思えない。この不便さや、それに対する不評はある程度「織り込み済み」だったのではないだろうか。

それでも「いずれ人々は慣れ、朝夕には多少ぶつくさ言いながらも同じルートで通勤し、相変わらず渋谷で乗り換えし、渋谷のどこかで待ち合わせしてくれる」と考えたのだろう。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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