対照的な“対等合併”ケースにみる経営戦略(前編)

画像: Kitmondo Marketplace

2013.12.20

経営・マネジメント

対照的な“対等合併”ケースにみる経営戦略(前編)

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

今年は日本企業が絡む、注目すべき2つの国際的合併ケースが発表された。東京エレクトロンと米アプライドマテリアルズ、森精機と独ギルデマイスターだ。そのアプローチは対照的だが、どちらも“対等合併”を目指し、関係者が熟慮したことが窺われる。前者の組み合わせにおいては、特にその戦略性に注目したい。

第三は、少々専門的だが、顧客の製造プロセスへの「ワンストップ・ショッピング」的食い込みができるようになる点だ。元々、半導体製造装置というものは各社固有の得意領域があり、その部分に絞った製造プロセスの改善を提案するのが普通だった。しかし広い範囲のプロセスを統合したりすることでより大きな改善ができるのも事実である。今回のような製品ラインのオーバーラップが少ない大合併が意味するのは、製造工程の大部分にわたる統合的な提案をできるベンダーが出現するということである。本格的なプロセス統合製品の開発・提供は1~2年程度でできることではないのかも知れないが、確実に4~5年以内には業界構造が激変しているだろう。

第四は、次世代チップの製造装置の開発投資負担に耐えられる体力である。スマホの普及で半導体製造装置への要求度はますます高くなり、精密度と歩留まりの高いツールが要求されている。そのための次世代技術(例えば「極紫外線」による焼き付け)の開発には巨額の費用が掛り、小さなメーカーから順に脱落していくと言われている。ちょうど環境技術投資の巨額さが一時、自動車メーカーの合併や資本提携のブームを後押ししたように、これが今回の経営統合の一つの重要要因になった可能性は高い。

以上のように主要因だけ挙げても、業界内においてこの合併のインパクトが大きく戦略的に重要な意味を持っていることが明らかだ。それだけで成功するといえるほど単純な話ではないが、この経営統合が考え抜かれたものであることは間違いない。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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