人事部は、優先順位を間違っていないか。

2012.06.22

組織・人材

人事部は、優先順位を間違っていないか。

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長 /一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

人事とは、環境の変化に応じて組織や人材を最適化する機能であり、まさに今、人事部の時代認識が問われていると言ってよい。

HR総合調査研究所が、この2月に、人事担当者282名に調査した結果によれば、企業人事が重要だと考えている課題として、「優秀な人材の確保」「社員の教育・能力開発」「社員のモチベーションアップ」が上位となった。この調査では、5年後に重要となる課題についても聞いているが、これらが上位を占めており、概ね重要課題は現在も5年後も変化はないというのが人事担当者の考えのようである。

この調査を見て、私が非常に違和感を覚えたのは「中高年社員の活用」を重要な人事課題とした人が、23%しかいないことだ。19項目あるうちの、17番目である。5年後の予想についても26%で、人事担当者は「中高年社員の活用」を重要課題と認識していないことが、よく分る結果となっている。「中高年社員は十分に活躍しており、改めて活用を考える必要がない。」ということだろうか。あるいは、「活躍できていないが、ポストや給与をそれなりに調整する仕組みがあるので、問題ない。」ということだろうか。

いずれも、違うと思う。ほとんどの会社は、どのような役割を与えればよいか、給与と評価をどう設計すればよいか、など中高年社員の処遇に悩んでいるはずだ。バブルが崩壊して以降、企業の成長が鈍化し、ポストや人件費の観点から中高年社員の処遇は問題になってきたが、ほとんどの会社でこれまで大した対策は打たれていない。専門職制度を作ったり、役職定年を設けたり、早期退職制度を作ったりしてポストを空け、人件費の軽減を図る。そのほかは、給与の上昇を止めるための仕組みを作ったくらいだ。

間もなく65歳定年が義務付けられるから、このまま放置すれば、中高年社員の処遇は更に悩ましい問題になる。法的には解雇も不利益変更もできないから、中高年を活用・活性化するしか方法はない。そしてそれは、従来のような役職や給与の制度変更だけでは不可能なことくらい、人事担当者なら十分に分っているはずだ。それなのに「中高年社員の活用」が重要課題でないというのは、見てみぬふりか単なる先送りとしか言いようがない。また、上位に上がっている、「優秀な人材の確保」「社員の教育・能力開発」「社員のモチベーションアップ」だって、中高年社員をうまく活用できるかどうかに関係してくるだろう。

企業人事は、「中高年社員の活用」を最重要課題に挙げるべきだ。そもそも、「優秀な人材の確保」「社員の教育・能力開発」「社員のモチベーションアップ」といった、何十年も前から掲げられているような人事の重要ミッションを、時代が変わっても相変わらず同じ順番で掲げ続けていてよいのだろうか。人事とは、環境の変化に応じて組織や人材を最適化する機能であり、まさに今、人事部の時代認識が問われていると言ってよい。「中高年社員の活用」を最優先課題とし、処遇システムの改定はもちろん、適性や能力に応じた配置の見直し、再生・活性化に向けた教育研修や職場改善などに、積極的に取り組むのが今の時代の人事部のあるべき姿ではないかと思う。

高齢者の充実したライフスタイルを提言する、「老いの工学研究所」

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長 /一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革・健康経営など)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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