65歳定年時代における、中高年社員の育成ポイント。

2012.10.16

組織・人材

65歳定年時代における、中高年社員の育成ポイント。

川口 雅裕
組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

中高年のキャリア、育成のポイントとは。

私は、高齢者のライフスタイルについて研究・創造・提言しているNPO法人「老いの工学研究所」に、研究員という立場で関わっています。先日、この研究所が、約300名の高齢者を対象として調査を行い、「延命治療と希望余命」について発表しました。(ちなみに、“希望余命”とは「あと何年生きたいか」という考え方で、用語も当研究所独自のものです。)

それによると、『もし、心身の自立性が失われた場合、医療機器・医療行為による延命を望みますか?』という質問に「はい」と回答した人は、男性で3.6%、女性で2.3%、全体では2.8%にとどまりました。また、『ご自分の寿命として、何歳くらいを望んでいますか?』という質問に対する回答から、現在の回答者の年齢を引いた年数を「希望余命」とし、これを「平均余命」と比較した結果は、特に女性では、希望余命が平均余命を各年代で下回りました。

大雑把にまとめれば、ほとんどの高齢者は、医療によって無理に生きさせられるような最期を望んでいないということです。しかし、現実はそうではなく、平均寿命と健康寿命の差はじりじりと広がるばかり。本人の希望がそうなのであれば、家族の負担や社会保障の問題を考えても、このような状況を放置すべきでないのは明らかです。そしてその解決策は、意思や判断力のある間に、自分自身でどのような死を選ぶかを決めることでしょう。現状では、自分の意思と死に方があまりにも違っており、それを長寿と呼んで幸せのように扱うのはおかしいと思うわけです。

考えてみれば、この国には、自分の人生を自分で決めるという経験をしなくて済むような仕組みや雰囲気があります。進学では、偏差値ランキングや模擬試験での合格可能性を参考に、親や先生に相談すれば自動的に受験先が決まり、その先のキャリアを自分の頭で考えることはありません。就職も似たようなものです。会社に入っても、意思表明や決断をすることなく、会社の方針や指示・ルールに従って軋轢を避けながら働き続けるだけで、キャリアも会社任せ。幹部や管理職になっても、そのようなスタンスを変えられない人は非常にたくさんいます。女性は、結婚・出産や、その後の仕事と家庭の両立などで決断に迫られることが、男より多いように思いますが。

農業や漁業、町工場や個人商店などを仕事としていた人が大勢いた時代は、自分の意思で決めて行動するのが当然であった(そうせざるを得なかった)のが、企業組織に多くの人が吸収されるようになり、経済効率は上がったものの、意思の表明や決定というものからどんどん遠ざかっていって(意思決定をしなくてもよくなり)、自分で決めるという姿勢のない人が増えているように見えます。余生の過ごし方や人生の最期について、本人の意思が反映されない現在の状況には、このような背景もあるのでしょう。

もちろん、企業経営にとっても、高度成長期の単品大量生産時代ならまだしも、現在のような変化やイノベーションが求められる時代には、意思のない、決定のできない中高年の存在は、弱みにしかなりません。65歳定年時代を迎えようとする今、中高年社員を改めて強化する必要は多くの会社が感じているようですが、そのポイントは、自分の意思を持ち、それを分りやすく周囲に表明し、意思のある行動ができるようになってもらうことではないかと思います。ひいては、それが各々の充実した老後や、その人らしい立派な最期を迎えてもらうことにつながるはずです。


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川口 雅裕

組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革・健康経営など)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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