社外出向者の割合を義務付けてはどうか?

2013.04.09

組織・人材

社外出向者の割合を義務付けてはどうか?

川口 雅裕
組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

65歳定年時代の人材育成策

経験のある人には分かると思うが、出向(在籍のまま、他社で仕事をする)という経験は、新しい知識やスキルの習得だけでなく、それまでの仕事や職場にはなかった価値観や視点を獲得できるというメリットがある。BtoBの仕事を続けてきた人が、BtoCの仕事に就く。発注側に立ってきた人が、受注側になる。大企業でルールや手続きを重視してきた人が、中小企業でスピードや創造を求められる環境に身を置く。単価数百万円の仕事をしていた人が、数百円の商品を扱う仕事になる。出向でそのような変化を体験すると、それまで当然だと思っていたことが、そうでもないと分かったり、それまでの仕事の仕方や習慣の見直しが図れたり、自信があったことが実は大したレベルではないと判明したりするわけだ。

だから、資本関係もなく、業種や規模も異なる会社の間で、出向による人事交流が盛んになればよいと思う。第一に、教育効果が大きい。同じ職場で固まってしまった思考や行動に変化を促すには、研修やセミナーよりも環境を変えてしまうほうが早いし、インパクトも比ではない。第二に、多様性につながる。異なる文化で異なる仕事をしてきた経験や、そこで得た新しい知見は刺激的なものであるはずで、女性や外国人を採用して人材(とその能力)を多様化しようというダイバーシティと同じ意味を持つ。

第三に、中高年のキャリア形成に非常に効果的だ。同じ職場で同じような仕事をずっと続けてきた人は、社内でもだんだんと使いにくくなりがちで、実際に、その活用に悩む企業は多い。そうなる前に社外の仕事を経験することで、年をとっても柔軟に仕事や環境の変化に対応できるようになるだろう。解雇規制の緩和の議論がまた起こっており、反対する人の理由の一つは、解雇規制を緩和すると失業者が増えるというものだが、それは言い換えると転職する力(他社でも通用する力)がないということである。これについても、出向経験を積むことによってその力がつくだろうし、外の会社や他の仕事に対する恐れも小さくなるから、人材の効果的な流動化にもつながるはずだ。

会社に、社外出向者の割合を例えば5%くらいで義務付けてはどうだろうか。趣旨は、65歳定年時代において、中高年社員がさらに長期に渡って活躍できるようにすること。異文化・異業種の会社がそれぞれ社員の成長の場を提供し、OJTを施すことができる仕組みである。もちろん、出向者の受け入れによって知識やノウハウの吸収を期待できるし、出向終了後に戻ってきた人による業務改善・職場改革も期待できる。外で働いた経験に基づいた前向きな転職が増えれば、全体として適材適所に向かっていく可能性もあるだろう。これは、雇用調整助成金や教育訓練給付金とは違って、税金を使う必要のない人材育成施策となる。国は、出向を出す企業と受け入れる企業の情報提供と、出向に関する諸手続きのノウハウ面を支援すれば良いだけだ。

このコラムの筆者の新書が今月発売→「だから社員が育たない」(労働調査会)

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川口 雅裕

組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革・健康経営など)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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