岩波「コネ」採用事件にみるコミュニケーションギャップ

2012.02.06

ライフ・ソーシャル

岩波「コネ」採用事件にみるコミュニケーションギャップ

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント

岩波書店が採用方針を「コネ」だと公言したというニュースが一騒ぎになっています。9割方の意見は「コネ採用など許せん」という批判的なものですが、一方で「『コネ』にも理あり」という意見もあります。しかしこの騒ぎの注目点は岩波ではなく、その伝わり方にあります。

ネットでの炎上はもはや何も珍しいことではなくなりました。意図的に煽ることを書いて注目させるというステルスでないステマまで出始める始末。某有名タレントの書籍発売やら芸能人が文学賞受賞なんて、伊集院光氏のように堂々とステマですってDVD発売をステマ宣言する手法と違って(もちろん痴豚氏はわかってやってる)くやしいことに売れてるのですから、見事に掌の上に乗せられた客がいる訳です。

コネ採用が良いの悪いの言う前に、そもそも岩波書店はコネ採用なんて言ってないのではないでしょうか。
同社採用ページは
・応募資格 
 A:4年制大学卒業者(2013年3月卒業見込者を含む)1982年4月2日以降生まれ。
 B:出版関連業務(編集/製作/校正/販売/宣伝/経理/総務等)経験者=学歴は問わない 年齢:35歳程度まで
 ※岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること
としか書かれていません。

岩波の肩を持つつもりはビタ一文ありませんが、これって「コネ採用」なんですか?そもそも「コネ採用」ってどんな意味なのでしょうか。コネがありさえすれば「誰でも採用」という意味にはおよそ取れませんし、総理大臣や経団連会長のせがれならどうか知りませんが(たぶん無いと思うけど)コネがありさえすれば、どれだけ無能で学歴や能力や体力も就業がおぼつかないような人間を採用なんてあり得ません。

しかも岩波は「コネ」を持って来ればどんなバカでも全員採用と書いているのではなく、「紹介があること」としか書いていません。全く面識のない岩波の著者や社員から「紹介を受け」れば誰でも応募できます。そこから選考になるのです。これってコネ採用ですか?

私はいずれにもコネないですが、応募するなら;
1.コネないですけどぜひ検討して下さいと、迷惑承知で熱意を綴って応募する。
2.社員を探し出し、土下座して熱意を綴った手紙を渡して紹介をしてもらう。
3.お金に困っていそうな著者を探して、3万円で紹介を書いてもらう。
そんな手を考えました。あ、私は出版業務経験が無くて、年も35歳を相当超えてる!差別だ!岩波!私は被害者だ!

少なくとも昔からものすごいハードルの高い業界として名高い出版業界の、それも超有名出版社に就職したいと思うなら、この程度のハードルは当たり前すぎてむしろリーズナブルだと感じます。コネというのはそもそも自分の力ではどうしようもない、例えば血縁や長年の取引や高額な金品を介さなければ得られない特殊な不透明なもののことではないでしょうか。岩波の要求はむしろ出版社の業務に向いている立ち回り能力を実技審査しているように受け取れます。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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