米国小売業の「革新」が変わる

NRF(全米小売業協議会)が発表した「イノベーター・オブ・ジ・イヤー」は・・・?。「革新」というと、「技術革新」など、テクノロジー寄りのことのように思われてきたが、ウェブ時代、「個」の時代に、その定義が大きく変わりつつある・・・。

ザッポスの場合は、企業文化に徹底的な戦略的フォーカスを置いていることが評価されている。オープンで透明性の高い文化、社員の幸せを何よりも重視した文化を築くことが、企業という共同体に対して並々ならぬコミットメント(感情的投資)をもった社員を生み、それが、唯一無二の感動サービスや、熱烈なファンを生んでいるということが称えられている。ソーシャル・メディアという新しいテクノロジー・フォーマットの活用にも言及はされているが、それはあくまで、企業文化という戦略的基盤があって初めて成立したものだと明確に理解されている。

最先端のテクノロジーを活用することそのものが、「革新」ではないことを、ザッポスは立証している。最先端のテクノロジーを活用した上での、普通を超越した成果を可能にする仕組み、環境づくりこそが、「革新」であることを、ザッポスは身をもって証明した。それが、アメリカの流通業界における、ザッポスの大きな貢献であると私は思っている。

ところで、国際部門では、日本のファーストリテイリングが、「リテーラー・オブ・ジ・イヤー」を受賞した。これは日本人としてはとても喜ばしいことだ。授与式でMC(マスター・オブ・セレモニー)を務めたコンテイナー・ストア(アメリカでは、卓越したサービスで知られるリテーラーだ)社のCEO、キップ・ティンデル氏も、「(小売業に関わる者なら)誰でも、ニューヨークのSOHOにあるユニクロに一度は行ってみるべきだ」と絶賛だった。ファーストリテイリング社の柳井代表取締役も、「リテール業界で最も敏速で、最も恐れを知らぬリーダーだ」と高い評価を受けている。

例年注目しているNRFの年次カンファレンスだが、今年は、私にとっていろいろと感慨深いイベントだった。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。

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