アマゾンが屈した、史上最強の顧客主導型企業

2009.07.23

経営・マネジメント

アマゾンが屈した、史上最強の顧客主導型企業

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

米国時間7月22日、アマゾンが、「ザッポス」という会社の買収を発表した。その買収の背後にあるアマゾンの真意は・・・?

「ザッポス」については、以前、「最も働きたい会社ベスト100に見る、感動サービス時代の幕開け」という題名で、このサイト上でも書かせていただいたことがある。ザッポスは、米国で靴のネット通販という市場を切り開いた、パイオニア的存在である。それこそ、アマゾンの「ジャヴァリ」が産声を上げる前のはるか昔に、「ネットで靴を買う」という非常識を常識に変えたのが、ザッポスであった。送料は行きも帰り(返品)も無料、365日返品OKなど、今日、靴のネット通販市場でスタンダード化しているサービス・ポリシーの数々も、もとはといえばザッポスが考案したものだ。

そのザッポスを、アマゾンが買収した。そのニュースを耳にした時、私の体の中に衝撃が走った。

この買収が、ごく普通の買収でないことが、一目瞭然であったからである。

普通、買収というと、強者が弱者を買う、というイメージがある。

この公式にあてはめて考えると、アマゾンが強者、ザッポスが弱者、ということになるが、実のところはどうか。私はそうは思わない。

「Customer Obsession(顧客満足への執着)」を共通項としながら、アマゾンとザッポスは、いわば対極にあるアプローチをとってきた。アマゾンは、「最新のITを駆使し、顧客満足を自動化する」、そして、ザッポスは、「人とITの強みをフル活用し、最強の顧客感動体験を創造する」アプローチだ。「ウェブ時代における究極の顧客エクスペリエンスの実現」という点で、アマゾンに勝てるのはザッポスしかない、と、私は常日頃からずっと主張してきた。

実は、一年ほど前から、私はザッポスの研究を続けてきた。「感動サービス」の時代に、モノではなく、ハピネスを売り物にする新しい流通の姿として、ザッポスから学んだことを、最近、本に書き上げたばかりだ。

ザッポスは、「企業文化こそが、ブランドであり、競争優位である」と公言して憚らず、会社最大のアセットである、「人」に並々ならぬ投資をする。顧客エクスペリエンス創造の中核となるのは、「CLT(顧客ロイヤルティ・チーム)」と呼ばれるコンタクト・センター。コール・スクリプトも、対応時間の制限も存在しない、常識破りのコンタクト・センターである。顧客の心を揺り動かすためなら、「ほとんど何をしてもよい」裁量権をオペレーターがもつコンタクト・センターは、顧客が忘れることのできない、感動のサービスを日々創造している。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業でNASAプロジェクトなどに関わり経験を積んだ後、82年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「未来企業は共に夢を見る~コア・バリュー経営~」(2013年3月発売)、「ザッポスの奇跡 改訂版 - アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略」、「顧客の時代がやってきた!売れる仕組みに革命が起きる」などがある。

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