苦情学

2007.08.08

ライフ・ソーシャル

苦情学

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

西武百貨店で8年間にわたって 「お客様相談室」 を担当した関根眞一氏の著書、 「苦情学 クレームは顧客からの大切なプレゼント」 は読みましたか?

『苦情学』では、
顧客から寄せられる様々な苦情の適切な対処方法など、
関根氏が現場の体験からつかんだ

「実践的なノウハウ」

をわかりやすく紹介してくれています。

また、この本には、
常軌を逸した、とんでもないクレーマーたちと、
関根氏との壮絶なやり取り(闘い?)がリアルに
再現されているのですが、

「こんなやつらが世の中にはいるのか!」

と唖然とさせられますよ。

さて、関根氏によれば、
苦情対応には絶対に欠くことのできないものが
一つだけあるそうです。

それは、お客様の

「心理を察する」

ことです。

関根氏は、お客様相談室を担当してから、

「お客様の心理」

が読めるようになるまで5年かかったそうです。

そして、この5年間の関根氏の考え方の変化が、

「予測する力養成講座」(講談社MOOKセオリーVol.11)

のインタビュー記事で語られています。

“お客様相談室に配属されると、まずは会社の利益を
 保護する立場に立とうとするものです。
 会社や店舗のリスクにならないように、
 自分の言葉や態度に気をつけて対処する。”

これは間違いではないそうですが、
しかし「限界がある」と、関根氏は指摘します。

苦情を言う人たちをただ撃退するだけで終わっては
いけないからです。

関根氏の場合、お客様相談室に配属されてから1年ほどして

「店舗と顧客の中立の立場」

に立った考え方ができるようになりました。

関根氏は、

“そうすると、前よりも多くのことが見えてきたのです。
 でもそれでもまだ不十分でした。”

と答えています。

関根氏の考え方に
さらなる変化が起きたのは3年後のことでした。

“その頃から、ほぼお客様側の立場に立って
 物事を考えることができるようになりました。
 つまり、困っているのはお客様で、
 一刻も早く問題を解決したいのはお客様側なのだ、
 ということがわかったのです。”

そうすると、不思議なことに、

“苦情の約8割は電話での対応だけで
 解決できるようになりました”

とのこと。

続けて関根氏は、

「マーケティングの要諦」

にも通じるコメントをしています。

“大切なのは、
 お客様 を 満足させるのではなく、
 お客様 が 満足することなのです。”

“百貨店におけるゴールは、お客様を離さないことだと
 私は思います。そのために、お客様の立場に立って
 それぞれが満足する解決策を探っていくことが大切
 なのです。”

お客様を自社と相対する側に置いて考えるのでなく、
お客様側と同じ場所に自分を置いて考える。

これが、顧客の心理を的確に読むことを可能にし、
優れた苦情処理だけでなく、売れる商品づくりにも
つながっていくんだと思います。

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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