あるものを活かす

2009.04.05

経営・マネジメント

あるものを活かす

猪熊 篤史

既存の関係を耕し、新たな関係や価値を創造することが大切である。

1人で目がいきとどくのは、せいぜい200人程度だなどと言われる。これは、1.27億人を超える日本の人口の一部としか1人では密接な関係を持ち得ないことを意味する。一方で、知り合いが少ない人でも、知人を6人たどれば、世界中の人々とつながっているとも言われる(6次の隔たり)。知人同士の重複があるとしても、計算では数名の知人をたどることによって60億人を超える世界中の人々に連絡できることになる。

通勤・通学ですれ違う人々や見ず知らずの店員などとの交流を除いて、1人が1日に直接接するのは、接客サービスなどを除けば、数名から十数名ということになるだろう。講演などでも1人で20名を超える聴衆に対して話すとすれば、多い方である。家族、恋人、友人・知人、職場の同僚、上司、部下など、密接な交流がある人々は限られる。

取引先の役員と知り合いであれば取引が上手く行く場合や業界の要人が親戚にいれば他社との競争において優位に立てる場合など、理想的な環境を望めば切がない。

そんな希望を抱いて、人脈をくまなくたどるのも良いであろう。学校での勉強や資格の取得は、共通点の多い安定的な関係を構築・維持するきっかけになる。同じ目標・目的、興味関心、価値観を共有して、一定の知識、能力、経験を持つことになるため、学位や資格を取得することの意義は深い。自分の立場や居場所を確認、確保して、自己を高める足がかりになる。

一方で、現状を取巻いている環境を有効に活用することも重要である。社内を見回して周りに優秀な人材がいないとなげいたり、他人の生まれ育った境遇をうらやむのではなく、自分を取巻いている人々、資産や設備などを活かして、身の回りの環境をより良いものに改善していく努力や工夫が必要である。そられは自分自身を高める、あるいは、深めることにもなる。

スポーツの世界では、本当に優秀な選手が一人いればチームとして高い成績をおさめることができる。あるいは、良好な関係を築ければ、特別優秀な選手がいなくてもチームとして好成績を残すことができる。

となりの芝生の青さをうらやんだり、遠くを見渡して非現実的な理想を描いたり、採用し得ない人材の獲得のために奔走したりするのではなく、身の回りの環境や人脈を見つめ直す。そんな活動が、個人にも、企業にも、社会にも、必要である。

【V.スピリット No.115より】

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