リーダーの真価 【3】

2009.04.01

経営・マネジメント

リーダーの真価 【3】

猪熊 篤史

リーダーに問われるのは知識、能力、経験ではなく姿勢である。

人がリーダーに対して「踏み台」を提供するということはどういうことだろうか?人はなぜリーダーを乗せた「ミコシ」を担ぐのか?

それは、それらが必要だからである。あるいは、それらが必要だと思う(感じる)からである。

リーダーの活動は人々の「ニーズ」を満たす。人々のニーズが集まって社会的なニーズとなる。そこには誰かがリーダーとして人々の顕在的、あるいは、潜在的なニーズを満たさなければならないという「ミッション(使命)」が存在する。

人々のニーズ、多くの場合、漠然として曖昧なニーズに、形や方向性を与えるのはイマジネーション(想像力)である。外的な環境や個々人の個別的、心理的な状況が分析され、理解され、イマジネーションによって意味や価値のある将来像や未来の設計図が描かれる。それが「ビジョン」である。このビジョンを実現する力を「創造力」と呼ぶことが出来るだろう。その重要な要素がリーダーシップである。

「ミッションのあるところに、ビジョンが生まれる」と言える。一方で、将来が絶対的な力によって計画されたものでない以上、誰もがビジョンを持ちえて、それを実現するという無数のミッションが存在することになる。

これらビジョンやミッションは、見方を変えれば「大義名分」と呼ぶことができる。個人的な欲求ではなく、より多くの人々の心をとらえ、多くの人々の欲求を満たす目標や目的、あるいは、戦略に人々は共感して、それらを支持する。人々はそれらを掲げるリーダーに「踏み台」を提供し、また、リーダーの乗るミコシを担ぐ。

真のリーダーは独裁者ではない。独裁者は、恐怖や組織的な規律によって人々の思考や行動を規定する。独裁者に率いられた人々は盲目的に独裁者に従うしかない。

一方で、真のリーダーは、人々の「信頼」によって支えられる。人々はリーダーに対して懐疑的でありえるが、「信頼」がリーダーをリーダーたらしめる。

ある意味において「天才的な」独裁者に率いられた組織は不幸である。その独裁者亡き後、組織は衰退することになるであろう。次のリーダーが組織の中に育たないからである。

一方で、真のリーダーを中心とする組織は、そのリーダーが引退しても発展・存続する。次世代のリーダーが各階層において育っているからである。

次世代のリーダーの育成は、リーダーの活動の「目的」ではない。それはリーダーの活動の「結果」である。真のリーダーシップは、次世代のリーダーを育てる。真のリーダーは、リーダーシップの実現のために次世代のリーダーを育てる。次世代のリーダーが育っているかどうかという基準によって、リーダーの真価を問うこともできる。

【V.スピリット No.111より】

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