将来のキャッシュフロー

2008.05.07

仕事術

将来のキャッシュフロー

猪熊 篤史

将来の収益に基づいた企業価値や事業価値の評価方法について解説します。

「あなたのサラリーマンとしての価値はいくらだと思うか?」と聞かれたら、戸惑うことだろう。それでも、あえて計算するとしたら、どのように計算するだろうか?現在の貯金の額、保有している資産(家、マンション、車、服、アクセサリーなど)の価値を合計して計算するのも一つの方法だろう。しかし、保有している、知識、能力、ノウハウ、家族や友人との関係、仕事における関係など目に見えない資産、形にならない価値を評価することは難しい。そのような計算を機械的に行ったら不謹慎だとお叱りを受けることだろう。

ここでは人ではなく企業としての価値(企業価値)の計算方法について紹介する。(プロ野球選手など特定の職業人としての経済的効果を推定することは出来るが、人間としての価値を算定することはできない。まさにプライスレスである。)

企業の価値の算定方法には大きく分けて2つの方法がある。一つは企業が保有する資産によって価値を算定する方法である。もう一つは、企業が将来もたらす収益によって価値を算定する方法である。

資産を基に算定する価値には、簿価と時価という2種類がある。簿価とは基本的に資産を購入した時に支払った価格を基準に価値を計算するものである。時価とは、市場で売買される価格を基準に価値をはかるものである。一般的に市場で売買されない資産(会社自体、非公開株式、工場、機械など)は清算価値(投げ売った場合の価格)や再調達価値(改めて調達しなおす場合の価格)を考慮して時価評価することになる。

間接金融、つまり銀行からの借入による資金調達が優勢な日本において基本となるのは資産価値に基づく評価である。

しかし、実際に保有する資産の価値を基準にした企業価値の算定では、会社設立に必要な資本金を調達した後は、利益を上げて、資産を増やさない限り資産価値を上げることが出来ないことになってしまう。資産としての価値がある機械、土地、建物などを購入する場合以外は新たに資金を調達することができない。

ここで注目されるのが将来の収益、将来のキャッシュフローに基づいた企業価値、あるいは、事業価値の算定方法である。このような方法に従えば、資産が仮にゼロであっても企業価値を算定して、発行する株式数で割ることによって、株式を発行することによって集められる資金の総額、あるいは株価を求めることが出来る。詳細なキャッシュフローの計算式は省略するが、仮に今後5年間に毎年1,000万円ずつ現金収入が見込める企業があって、金利(割引率)がゼロだとすれば、この企業の価値は今後5年間のキャッシュフローの合計額、つまり、5,000万円ということになる。この企業が100株の株式を発行するのであれば、一株当り50万円(5,000万円÷100株)で資金調達出来る計算になる。

現実問題として、創業期に親族、友人、知人、知り合いの資産家(エンジェル)など以外の第3者から資金を集めることは困難である。しかし、集められる範囲の資金を有効に活用して、その後の必要資金を集めるための足場を作ることは出来る。

誠実で有望な経営者、情熱のある強い経営チーム、優れた技術・製品・ビジネスプランに対して外部から資金を集めることは不可能ではない。

【V.スピリット No.5より】

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