ビジネスを加速する共感型経営

2008.05.11

仕事術

ビジネスを加速する共感型経営

猪熊 篤史

ベンチャー、新規事業、新製品が成功するためには顧客の共感を得る必要がある。製品・サービスの品質、価値、有用性を高め、より多くの顧客層から共感を得る必要がある。

ちょっとしたアイデアや漠然とした想いから事業が始まることがある。そのように始まる事業の中には、長年にわたって築かれた関係を引き継ぐことの出来る恵まれたものもある。個人と個人、組織と組織、あるいは個人と組織は長い年月をかけてお互いの価値観、考え方、特質などを理解し、関係を深める。長年の関係、義理や人情を尊重することは悪いことではない。むしろ賞賛されることが多い。しかし、それらに依存して何の問題意識も持たないのであれば、お互いが泥船に乗っていることを挽回不能な時期になって気づくかも知れない。

事業活動では、顧客ニーズに適合する技術、効率的なプロセス、より高度なニーズに対するソリューションを情熱や強い意志を持って実現していかなければならない。このような絶え間ない挑戦なしに事業は存続しえない。

新しい製品やサービス、あるいは、新しい企業の提供する製品やサービスを物珍しさから試用する顧客がいる。このような顧客を満足させることは重要だが、それだけでは事業は成り立たない。

物珍しさから製品を試用する顧客、新しい物好きで移り気なユーザーを超えて、製品の価値を認める顧客をつかむ必要がある。

新しい会社の製品、あるいは既存の会社の新製品に対して価値を見出す顧客にはいくつかの階層があると考えられる。

まず、会社やその経営者の方針や人柄、事業の可能性に共感する顧客がいる。このような顧客層は、実績のある経営者、学識者や専門家など「ビジョナリー」と呼ばれるような社会的に影響力を持つ人々であることが多い。

次の顧客層は、製品自体に価値を見出す人々である。これらの人々はビジョナリーやオピニオンリーダーなど信頼できる人々が一定の評価をしていることを前提に、企業、経営者、事業方針、将来性などにはあまり関心を持たず、製品やサービス単体としての品質、性能、価値を評価する。

さらに、製品とそれに付帯するサービス、製品の分かりやすさや使いやすさ、友人や知人も使っているという安心感などを評価して製品を購入する人々がいる。

最後に、世の中のほとんどの人々が製品を使っているという事実とその安心感から製品を購入する保守的な人々もいる。

これらの顧客層に受け入れられて、事業として十分な市場を確保するためには個々の顧客層の「共感」を得る必要がある。

このような共感には、初期段階のものから順に次のようなものがある。
1. 新しいという事実に対する共感
2. 人、組織、事業の性質や可能性に対する共感
3. 企業が提供する製品やサービスの単体に対する共感
4. 製品・サービスとそれらに付帯する全ての製品・サービスに対する共感
5. 製品・サービスとそれらに付帯する全ての製品・サービスに向けられる共感に対する保守的な共感

ベンチャー、新規事業、新製品が成功するカギとなるのは、第2の共感、つまり、異なる背景であるにしろ同質な経験をして「成功」した実績を持つ人々の共感を得ることである。そして、その共感を裏切らないように製品・サービスの品質、価値、有用性を高め、さらには付帯する製品やサービス、品揃えなどを充実させ、より多くの顧客層から共感を得る必要がある。

個人や組織の情熱や意志を原点として、実力を高め、無限の才能や資質を開花させていかなければならない。

【V.スピリット No.10より】

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。