「今だけ・金だけ・自分だけ」が語る社会の病巣

2026.06.09

組織・人材

「今だけ・金だけ・自分だけ」が語る社会の病巣

齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事

若手研修を行うと、いつも感じることがある。 今の若手は、決して能力が低いわけではない。むしろ、優秀な若手は多い。指示されたことには真面目に取り組む。資料も作れる。発表もできる。チームで話し合い、それなりのアウトプットも出せる。 しかし、ある問いを投げると、多くの若手が止まる。 「あなたの仕事は、どんな社会課題を解決しているのか」

しかし、「今だけ・金だけ・自分だけ」の視座では、それができない。

今だけを見るから、若手育成に時間を使えない。
金だけを見るから、人への投資をコストと見なす。
自分だけを見るから、仲間の成長や社会への責任を引き受けない。

この病巣を放置すれば、日本は能力がないから衰退するのではない。
人材がいないから衰退するのでもない。
視座を失ったから衰退するのである。

だから、これから必要なのは、単なるリスキリングではない。
AI研修でも、DX研修でも、コミュニケーション研修でも足りない。

必要なのは、視座を育てる教育である。

自分の仕事は、誰の未来を良くしているのか。
自分の一言は、チームにどんな影響を与えているのか。
自分の行動は、3年後、10年後、次世代に何を残すのか。
自分の会社は、どの社会課題を解決するために存在しているのか。
自分は、どの範囲まで責任を持つ人財へ成長したいのか。
今の自分は、「今だけ・金だけ・自分だけ」に落ちていないか。

この問いを持てる人が増えなければ、日本は変わらない。

真のリーダーの使命も、ここにある。
若手を管理することではない。
若手の中に眠っている社会性のスイッチを入れること。
仕事の先に顧客の痛みを見せること。
チームの先に社会的価値を見せること。
目の前の業務を、国の人財へ成長する道に変えること。

若手は弱いのではない。
若手は、まだ社会と接続されていないだけだ。

日本が問われているのは、若手の能力ではない。
若手にどんな視座を渡せる大人がいるのかである。

「今だけ・金だけ・自分だけ」は、個人の価値観の問題に見える。
しかし、それは社会の病巣である。

この病巣を治すには、視座を上げるしかない。
時間軸を未来へ伸ばす。
空間軸を社会へ広げる。
成長軸を成熟へ高める。

その先にしか、仕事は志事にならない。
人材は人財にならない。
企業は社会の器にならない。
国は未来を取り戻せない。

日本の再生は、大きな政策だけで始まるのではない。
一人のリーダーが、今日、若手にこう問うところから始まる。

あなたの仕事は、誰の未来を良くしているのか。
あなたは、その仕事を通じて、どんな人財へ成長したいのか。

この問いを取り戻したとき、若手は単なる作業者ではなくなる。
そして職場は、国の未来を育てる器へと変わり始める。

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齋藤 秀樹

株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事

富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。

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