若手研修を行うと、いつも感じることがある。 今の若手は、決して能力が低いわけではない。むしろ、優秀な若手は多い。指示されたことには真面目に取り組む。資料も作れる。発表もできる。チームで話し合い、それなりのアウトプットも出せる。 しかし、ある問いを投げると、多くの若手が止まる。 「あなたの仕事は、どんな社会課題を解決しているのか」
若手には「社会に関心を持て」と言う。
しかし、政治も企業も、若手の未来を中心に設計されているようには見えない。
若手には「成長しろ」と言う。
しかし、上司自身が学んでいない。
若手には「自分事にしろ」と言う。
しかし、仕事の意味や社会的価値を語らない。
この状態で、若手だけに社会性を求めるのは無理がある。
パーソル総合研究所の調査では、日本の就業者の56.1%が業務外の学習時間なし、過去3年以内の研修受講経験も72.7%が「ひとつもない」とされている。学ばない大人が多数派になりつつある国で、若手だけが自然に視座を高め、社会課題に向き合い、国の人財へ育つはずがない。
しかも、若手は早期に離職している。厚生労働省によれば、令和4年3月卒業者の就職後3年以内離職率は、大卒33.8%、高卒37.9%である。中小企業では、事業所規模によって大卒でも半数前後が3年以内に離職する。
つまり、日本ではこういうことが起きている。
基礎能力の高い若手が入社する。
しかし、仕事と社会課題を接続する教育を受けない。
上司は十分に学んでいない。
職場は成長実感を与えられない。
若手は育つ前に離れていく。
残った組織には、古いOSが温存される。
これは、人材不足の問題ではない。
視座不足の問題である。
日本生産性本部の「労働生産性の国際比較2025」によれば、2024年の日本の時間当たり労働生産性はOECD加盟38か国中28位、一人当たり労働生産性は29位である。Gallupの日本データでも、日本で仕事にエンゲージしている従業員は8%にとどまり、東アジア平均18%、世界平均20%を大きく下回っている。
これらの数字は、別々の問題を示しているようで、実は一つの病巣を指している。
人が育っていない。
仕事が社会性と接続されていない。
職場が成長の場になっていない。
上司が学んでいない。
若手が自分の未来を会社に預けられない。
そして社会全体が、今だけ・金だけ・自分だけの視座に引き寄せられている。
この視座では、国は静かに縮んでいく。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口では、日本の総人口は2020年の1億2615万人から、2070年には8700万人へ減少すると推計されている。高齢化率も、2020年の28.6%から2070年には38.7%へ上昇する。
人口が減る国ほど、本来は一人ひとりの人材価値を高めなければならない。
若手を、単なる労働力ではなく、未来をつくる人財へ育てなければならない。
仕事を、生活費を得る作業ではなく、社会課題の解決と自己成長を両立する志事へ変えなければならない。
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株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。
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