これまで数々のピンチのときに、漫画の力に助けられたと語り、現在、日本のポップカルチャー・コンテンツを世界に広げるべく活躍中の保手濱彰人さん。著書『武器としての漫画思考』(PHP研究所)がベストセラーとなり、今後は漫画を活用した、人財育成にも注力すると語る保手濱彰人さんにお話しを伺いました。 聞き手:猪口真
猪口 完全にDNAですね。また、紙面のつくりに関しても、日本の漫画はクオリティもオリジナリティも高いです。

保手濱 1ページの中に、多角的なアングル、細かなオノマトペ、セリフ、表情、間までが詰め込まれている紙面は、漫画以外にありません。以前に、一緒に会社を立ち上げたパートナーは、「漫画は映画をつくるための最強の絵コンテだ」と言っていました。漫画はカメラワークそのものなので、原作に忠実につくられたアニメが面白いのは当然なのです。これほど映像的な思考で構成された紙メディアは、世界でも漫画しかありません。
こうした表現は、鳥獣戯画から続く歴史的な流れだけでなく、流通インフラの存在も影響しています。最近はネットの普及で減ってきましたが、日本は全国に書店網が張り巡らされています。明治維新以降、西洋文化が流入し、追いつき追い越せの状況の中、政府主導で民衆を牽連し、メッセージを全国に一斉に伝える必要があり、紙のメディアを瞬時に流通させる書店網が整備されました。この流通インフラがあったからこそ、漫画は1冊あたりの単価を低く抑えることができて、1ページの中に多くの情報や表現を詰め込む文化が育っていったのだと思います。
一方、同じコミックでもアメコミはまったくの別物です。流通網が限られているため単価が高く、大量生産、大量消費ができません。その結果、1ページあたり、1冊あたりの単価を高くするために、美術作品のような写実的な表現が求められ、市場があまり広がりませんでした。漫画とアメコミは似て非なるものです。アメコミは、西洋の伝統的な絵画表現の延長線上で発展してきた文化なのだと思います。日本の漫画は、歴史・文化・流通インフラという複数の要因が重なって生まれた、世界で唯一無二の紙メディアなのです。
次に続く
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