ふるさと納税は見直しすべき局面にある

2023.12.20

経営・マネジメント

ふるさと納税は見直しすべき局面にある

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

ふるさと納税が多くの自治体を地域活性化に本気で取り組ませた効能は大きい。しかし一方で、真の経費率の大きさが5割近いという運営体制や「お得感」だけが追い求められている実態など、制度の歪みは放置すべきでないところまで来ている。

この時期になると、ふるさと納税絡みの番組や特集記事そしてCMが、テレビでもネットでも非常に目に付く。それだけ世の中の関心の高さを示しているのだろう。

実際、この制度は地方の自治体をして地元名産品や当該地ならではの独自イベントの開発のために躍起にさせる原動力になっている。昔なら、中央の役所や偉い政治家に陳情して補助金を獲得することと、東京の大企業に地元に工場などを建ててもらうことぐらいしか地域活性化の有望な手段はなかった。そうした「他人様の力頼り」に比べれば実に健全な地域活性化の努力だ。

特に農水産業しかないような自治体にとっては、地元で採れる農水産物が立派な返礼品に化け、税収アップと地元産業の活性化に直結するのだから、知恵と力の入れ甲斐があるというものだ。

従来なら買い叩かれて利益確保が難しかった産品でも、自分たちで少し加工し適切にブランディングすることで大いに付加価値を生み出せることに気づかせてくれた点だけでも、この制度が役に立ったと評価してよいと思う。

ところで、今年のふるさと納税では多くの返戻金の寄付額が「値上げ」された例が相次いだようで、ネット上では「ここにも物価高の影響が」という、悲鳴とも非難ともつかないコメントが幾つも見られた。

確かに原材料や人件費が高騰したことも追い打ちしているが、実は主な要因は国の規制が厳しくなったことだ。総務省が19年度に打ち出した「返礼品は地場産業に限る。調達費は寄付額の3割以下、宣伝費や送料を含めての経費総額は5割以下とする」というルールが守られていない実態が報道で明らかになったことを受けて、この6月辺りから厳格化された影響なのだ。

総務省が当初報告を求めていたのは募集に要した費用だけだった。しかし、大半の自治体が「おんぶにだっこ」的に仲介サイトに丸投げしている、寄付後の手続き経費やその他のサービス料金まですべて合算すると、5割を超えているケースが横行していたのだ。

この「5割ルール」の厳格化以降も経費率は5割近くに達する自治体が大半だと目される。都市部の住民サービスに使われるはずだった税金の半分ほどが経費として消えてなくなり、その大半は仲介サイトなど東京の大手業者に流れる構図だ(これは飲食店がコロナ過前、大手口コミサイトにいいように牛耳られていた様相を思い起こさせる)。

これが本当に、ふるさと納税が目指していた制度趣旨だったのか。

また、ふるさと納税を利用する側にも問題がある。「この地方を応援したい」という気持ちからというより、単に「よりお得な返礼品」を求めて(「寄付額」のうち2,000円を超える分は翌年の住民税などから控除されるから)通販ショッピングしているに過ぎないケースが圧倒的ではないか。これがふるさと納税制度の趣旨に沿った姿だろうか。絶対違うだろう。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/                  弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/         代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/

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