少子化と拝金主義:文明論的成長限界

2023.03.11

ライフ・ソーシャル

少子化と拝金主義:文明論的成長限界

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/ローマ帝国をはじめとして、文明はある一線を越えると、かならず衰退する。社会ゲームの勝者が確定的になってしまうと、絶対的に勝ち目が無くなったその他の絶望者たちは参加意欲を急速に失い、社会そのものが空中分解してしまうからだ。/

それも、金持ちが百万円のために要する努力に比して、貧乏人が百万円のために要する努力は、比較にならないほど大きい。だから、貧乏人ほど、拝金ゲームからいち早く脱落する。一方、金持ちにしたところで、幸せそうに見えるものの、財産維持増大に生活を費やし、家庭も仕事もタガが外れ、実情はぐちゃぐちゃという場合も。彼らは見た目はセレブながら、破綻リスクを極限まで増大させ、いつタワーマンションの上層階から真っ逆さまに堕ちるか、時限爆弾を抱えながら、優雅に昼からシャンパンを飲む。

ローマ帝国をはじめとして、歴史上、さまざまな文明が栄えてきたが、ある一線を越えると、かならず衰退する。ゲームの勝者が確定的になってしまうと、絶対的に勝ち目が無くなったその他の絶望者たちはゲーム参加意欲を急速に失い、ゲームそのものが空中分解する。たとえば、自動車でも、一戸建てでも、自分も買えるとみんなが信じているうちは、人々が熱中して買い求める。だが、競争が激化し、買うための努力が、生活にとって負担過大になった下層から関心を失い、やがて上まで倒壊する。

現代日本の結婚も、そうだ。勉強も、出世も、カネ儲けも。よほどの金持ちでなければ、それを手にいれるために必要とされる努力のわりに、成果がもはや割に合わない。それで、ゲーム参加者が急速に減っていく。絶対的に勝ち目が無いのに、いまさらだれも結婚したいと思わない、勉強したい、出世したい、カネ儲けしたいと思わない。

政府はいままた小銭をばらまいて人をゲームに呼び戻そうとしているが、カネの補助しか思いつかない政治こそ、まさに拝金ゲームに染まった思想。そんな小銭ていどで、貧乏人が富裕層に逆転するチャンスが掴めるか? 上に8%以上ものケタはずれの金持ちがいるのに、貧窮勤労者が結婚相手を見つけられるか? カネのかかる子どもを増やせるか? 結局、敗北者は敗北者のまま、絶望者は絶望者のまま。

考えてみれば、江戸時代はよくできていた。いくら商人がカネを持っていも、権力と武力を持つ理不尽な武士には頭が上がらない。武士にしても、農民の協力がなければ石高が増やせない。その農民も、貨幣経済の進展で、商品作物を商人に買ってもらわないと生活ができない。おまけに、ヤクザや山賊、河原芸人、宗教家や遊興人などもいた。また、身分の上下より伝統と格式が重んじられ、才覚次第で養子や抜擢も頻繁に行われた。つまり、社会の価値観が多元的で、それぞれに尊厳と屈辱のバランスがとれていた。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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