自己犠牲のサービス経営から卒業するバランスチェック

2022.10.17

経営・マネジメント

自己犠牲のサービス経営から卒業するバランスチェック

松井 拓己
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

「良いサービスを安く」「NOと言わない」そろそろ日本のサービス経営は自己犠牲を前提にした事業から脱却しなければなりません。人手不足を解消しようと効率化やDXを進める一方で、サービスの価値がどんどん削がれている現状もあります。顧客を犠牲にする押し売りと囲い込みの顧客拡大から抜け出せずにいる企業も。サービス経営が、顧客・従業員・事業のどこかが犠牲になってないか、バランスチェックをしてみましょう。

サービス事業の構成要素を、顧客、従業員、事業の3つに分けて捉えたときに、どこかが犠牲になっているサービス事業はうまくいきません。

「そりゃ当たり前でしょ」

と言いたくなるかもしれませんが、サービス事業の実態はそうでもありません。サービス経営課題に取り組んでいる企業でも、どこかが犠牲になっているために、取り組みがうまくいかないことが多いのです。

「顧客拡大」が顧客を犠牲にする

顧客や事業の拡大に熱心な企業を覗いてみると、実は顧客を犠牲にしていることがよくあります。「いかにして顧客に売りつけるか」「いかにして顧客を囲い込むか」という観点で奮闘しているようなケースです。ビジネスである以上、業績は欠かせません。しかし、その取り組みが提供者都合の押しつけでは、顧客からの評価は低下し、従業員は疲弊してしまいます。いずれは顧客も従業員も、離れていってしまうでしょう。

自己犠牲を前提にした「サービス向上」「おもてなし」

顧客からの評価向上は、サービス事業の成長エンジンになります。しかし、顧客満足やサービス向上、おもてなしというテーマを、建前論や精神論で捉えて、間違った解釈をしていることがあります。サービス提供側が自己犠牲を払ってでも、顧客のために何でもかんでも尽くすことが良しとされる風潮があるのです。顧客は喜んでくれるかもしれませんが、そのためにサービス提供側が自己犠牲を払って疲弊してしまうのは、サービス事業として健全な姿ではありません。

「働き方改革」が働きがいを犠牲に

人材不足や労働環境の改善に注目が集まり、働き方改革や従業員満足の向上に熱心な企業が増えています。しかし、働きやすさを改善しようと残業規制をかけた結果、働きがいを犠牲にしてしまって、働き盛りの社員が逆にモチベーションを下げているケースが少なくありません。働き方改革は、「働きやすさ」と「働きがい」に分けて捉える必要があるのです。

「生産性向上」でサービスの価値まで削ぎ落とす

日本のサービス産業の生産性はアメリカの半分しかなく、サービスの生産性向上は喫緊の課題です。しかし実情は、生産性向上といっても効率化ばかりが着目されています。手間がかかるからと安易に顧客接点を省力化や自動化して、サービスの価値を犠牲にする効率化が散見されます。サービスの魅力を削ぐような効率化では、大切な顧客が離れてしまって本末転倒です。

顧客ががっかりするサービスの「技術革新」

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松井 拓己

松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。           代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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