ウーバーとグラブハブ:生き残りをかけた憎まれっ子同士の合併

画像: ダイナ・サーチ撮影

2020.05.19

経営・マネジメント

ウーバーとグラブハブ:生き残りをかけた憎まれっ子同士の合併

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

アメリカにおけるライドシェア最大手のウーバーが、料理宅配サービス大手のグラブハブに買収提案。コロナ・ショックでウーバーの中核事業である「パッセンジャー(人の輸送)ビジネス」が大打撃を受ける中、かたや大流行の料理宅配サービスに突破口を見出そうという算段だ。しかし、「今をときめく」はずの料理宅配サービスには、やってもやっても利益が上がらない、という致命的な欠陥が・・・。

憎まれっ子は世にはばかるのか
最後に、この買収案件に関してもうひとつ興味深い点は、これが「憎まれっ子同士の合併」であると評されている点です。

ウーバーも、グラブハブも、その事業の運営にとって必要不可欠な「パートナー企業」と敵対関係にあることがよく知られています。ウーバーの場合、前CEOカラニックの時代のスキャンダルから学び、近年、イメージの刷新に注力はしているものの、未だにドライバーや地方自治体との衝突が絶えません。そして、グラブハブは、先述の通り、特に独立系のパパ・ママ・レストランの利益を搾取する存在としてほうぼうから非難を浴びています。

「憎まれっ子、世にはばかる」ということわざがありますが、ほんとうにそうでしょうか。生活者にやさしくないビジネスは、かならず生活者からのしっぺ返しを受けます。そしてこの「生活者」という言葉は、従来でいうところの「顧客」ばかりではなく、「従業員」や「取引先」や「パートナー企業」や「地域社会」など、会社を取り巻くすべてを含むのです。生活者に愛される会社になることが企業の成功における絶対必要条件です。

「憎まれっ子同士の合併」が果たして生き残りの突破口になりえるのかどうか、私的には、ウーバーとグラブハブの合併には大いに疑問を感じるところなのです。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。

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